「提言」新憲法の制定は、いつ頃になるか(中編)

◇日本は、まだ新しい社会秩序(SS)の誕生点に至っていない◇

社会秩序(ソーシャルシステム、略してSS)の盛衰パターンを研究する文明法則史学では、明治維新(1868)から大東亜戦争敗戦(1945)に至る約77年間を、一個のSS(近代日本SS)と捉えている。

その後はどうかというと、戦後復興期の上り坂→80年代の絶頂期→平成の下り坂で一山になっており、ここにもSSに準ずる盛衰があったものと推定している。但し、SSに必ず発生する文化型のパターン(少年型文化→
青年型文化→壮年型文化→老年型文化)が現れていないこともあり、不完全なSSという意味で「準SS(戦後準SS)」と呼んでいる。

戦後準SSは、2010年頃に底を打って「過渡期」に入った。リーマンショック、尖閣危機の顕在化、東日本大震災などによって、バブル崩壊以降長く続いた「閉塞の心理」から、「危機の心理」へと社会心理の転換が導かれたのである。

2015年現在、我が国は、次のSSを誕生させる前の「谷底」に位置していると分析。日本は、まだ新しいSSの誕生点に至っていないのだ。このまま衰亡して終わることのないよう、何としても2020~2025年頃には新SSをスタートさせねばならない。

◇自主憲法が制定されないのは、アメリカ占領下が続いているから◇

戦後は、SSに必ず発生する文化型のパターンが存在していないことからも、準SSであると述べた。準SSの理由は、それだけではない。戦後我が国は、政治、外交、経済、金融、情報、軍事など、多くの分野に渡ってアメリカの指示を仰いできた。

沖縄はもとより、全国各地に130カ所以上の米軍基地があり、首都東京とその近辺には横田基地、横須賀基地、厚木基地、キャンプ座間などが置かれている。戦勝国の軍事基地が日本中に設置されたまま、戦後70年(平成27年)が経過したのである。世界の常識に照らせば、独立した主権国家とは、およそ言い難い実態であろう。

文化においても、映画やテレビ番組、ファッションなどに、アメリカの影響が強く日本に及んだ。アメリカを相手に多くの犠牲を払いながら戦ったことを忘れて、日本人はすっかりアメリカナイズされていったのだ。

100年後の歴史家は、日本の戦後を「アメリカ占領下時代」と呼ぶことになるに違いない。

則ち、アメリカに占領され続けていることで、いつの間にか自立を必要としなくなってしまったという現実が、押し付けられた憲法から脱することが出来ず、自主憲法制定の気運が盛り上がらない真因となっているのである。まともな改憲論議が出来ないこと自体が、この国に“真の主権”が存在しないという事実を如実に物語っていよう。

◇新憲法の完成は、SSの法則からすると2050年あたりか◇

誤解して頂きたくないのだが、筆者は反米を唱えているのではない。今はまだ、中国の圧力に対抗するためにもアメリカの力は必要だ。しかし、日本がこれから先、他国に侵略されない自立した国家になるためには、脱米や離米を進めざるを得ないことになると主張しているのだ。

1776年の独立宣言頃に誕生したアメリカSSは、20世紀に入って最盛期を迎えたが、ベトナム戦争で疲弊し60年代後半以降衰退期に入った。終了点は、おそらく2030年前後になると目されている。「終了」を具体的に言えば、ドルが基軸通貨の地位から転落し、最強の軍事大国の地位を他国に譲り、世界全体を指導する力を失い、内政が不安定で他国に手が回らなくなるといったことであろう。

まだまだアメリカには底力があるが、興隆の勢いは既に中国に移っている。中国とて、その未来には不安が付きまとい、常に内部崩壊の危機をはらんでいる。でも、10数億人による巨大な「人民生命力」を侮ってはならない。

衰亡するアメリカと、膨張帝国と化してきた中国。その間にあって、自立した国家をSSとして建設していくのが、当面の日本の国家目標なのだ。

まず、この5年から10年の間に明らかにしなければならないのが、日本は何を目指すのかという新SSの基本精神だ。その後、成長するSSの「国民的勢い」と共に、段階を踏んで制定されていくのが新憲法である。それは、SSの法則からすると、おそらく2050年あたりの完成になるのではあるまいか。だから、焦りは禁物なのである。(後編に続く)