特集!安保関連法案可決・成立をどう受け入れるか

こんばんは。本号は安保関連法案成立に関する特集号です。

その1「日本は日本人の手で守る」はフェイスブック投稿で、久々に「いいね!」300件超えし、シェアが45件に及んだ評論です。

その2「安保関連法案の可決・成立を、どう受け入れるか」では、法案の前提をおさらいし、日米外交を振り返った上で、今後の大方針について述べました。

軍事専門家からすれば、観念的に思われる箇所があるでしょうが、法案成立の背景を理解し、今後の推移を予測するためのご参考になれば幸いです。

その1◆「日本は日本人の手で守る」◆

安保関連法案に関する議論が、どうもすっきりせず、モヤモヤ感が漂うという意見が多い。

全国で発生しているデモには、沢山の人が参加している。その多くが、今までデモに無関心だった人たちらしい。必ずしも政党主導や、イデオロギーで集まっているというわけではないようだ。

一般的な国民の意識は、概ね次のようなものではないか。もはや戦争で国際間の問題を解決させるべきではなく、戦争は決して起こしてはならない。しかし、他国の侵略を受けるわけにはいかない。もしも攻められたら祖国を守らねばならないし、そのための防衛力は必要。

法案賛成派は、だから集団的安全保障体制を整えよと主張している。
アメリカの力によってこそ、中国の侵略の意志を抑えられ平和が保たれると。
ところが反対派は、それこそ日本が戦争に巻き込まれるきっかけを生むことになると声高に叫んでいる。

結局、賛成派はアメリカ頼みだし、反対派も「侵略されることはないだろう」頼みだ。私は、両者とも一番大切なことを見失っていると思う。
それは「日本は日本人の手で守る」という決意である。

先ほど、Y新聞社の支局から電話があって「法案賛成派の意見を聞きたいのですが、林先生は賛成派ですよね。で、先生の肩書きは何にしたらいいですか?」とまくし立てられた。

私は「記者さんには残念でしょうが、普通の賛成派でも反対派でもありません。
私は、日本を守れるのは日本人しかいないと思っています。賛成派は、なぜ最初からアメリカをあてにするのでしょうか。反対派は、どうやって日本を守るのでしょうか。私は、いわば両派を超えた派ですね」と答えておいた。

戦争は本当に避けねばならぬ。負ければ甚大な被害を受けて占領される。
勝っても大変だ。混乱によって大量の難民が押し寄せて来るかも知れない。
しかも武装難民として。長期に渡って戦争の後遺症が残り、世界中が疲弊するだろう。

アメリカべったりの戦後保守も、中国に寛容過ぎる左翼も信用出来ない。
今こそ真正保守を起こし、解釈の限界にある憲法の部分的改正も議論し、国力の向上に努めなければならない。

中国に勝つ必要は無い。中国には、日本は攻め難い国、リスクが大きい国と思わせればいいのだ。そして、背後にアメリカをちらつかせておけばいい。

大国はリスクを避け、利のあるときしか仲間を助けてくれない。そう覚悟して、国民力や経済力を高め、我が国を守っていこう。日本を守れるのは日本人だけなのだから。

その2◆安保関連法案の可決・成立を、どう受け入れるか◆

安保関連法案が、参院本会議で可決・成立した。法案成立の背景には、次のような事情があった。

中国の脅威が高まり、東アジアの安全保障環境が変化した。それに対して、もはや日本一国では防衛しきれない。どうしても集団的自衛権の行使が必要。
また、武装漁民による離島上陸といった、グレーゾーン事態を想定しなければならなくなった。国際平和活動に対しても、日本だけ何もしないわけにはいかない。その都度特別措置法でしのいでいるようでは、世界に貢献出来ず無責任であると。

これらの理由は全て尤もであり、アメリカという同盟国の後ろ盾によって、日本の平和が保たれてきたことは事実である。

今年4月、安倍首相は訪米してオバマ大統領の歓待を受けた。
大統領は日本語で「お互いのために」と言われた。
沖縄・尖閣諸島の防衛に、日米安保が適用されることも明言された。

歓待には、アメリカの事情もあった。アメリカ自身が認めているように、その国力は漸次(ぜんじ)衰退している。2030年頃、パックス・アメリカーナ(米国による平和)は急速に幕を閉じ、米国一極体制は終わるという米国家情報会議(NIC)の予測が3年前に出されていた。

オバマ大統領は、昨年(平成26年)8月1日の記者会見で「米国は地球上で一番強い国だが、全てを支配しているわけではない。我々の国力には限りがある」と述べた。この発言が、中国の成長を前提にしたものであることは間違いない。

中国は海洋大国を目指し、太平洋をアメリカと二分する野望を持っていると聞く。また、大中華経済圏を狙ってAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立した。現在、南支那海の人工島造成に対して、アメリカの力をもってしても阻止出来ない状況に陥っている。アメリカが非難しても、中国は言うことを聞かなくなったのだ。

こうしてみると、いつまでもアメリカの世界指導力に変わりはなく、必ず日本を助けてくれるということはあり得ないのではあるまいか。いずれ同盟国をあてに出来なくなる可能性があるということを承知の上で、ひとまず安保関連法案が可決されたという状況を、我々は受け入れなければならないのである。

それでも反日をエスカレートさせる中国よりは、自由で民主的で話の通じるアメリカのほうが同盟相手としてずっといい。そのアメリカが世界をまとめられなくなってきたからこそ、日本も応分の負担をしなければならなくなってきたのではないか。アメリカは世界の保安官であり中国とは全然違うと、安保関連法案賛成派は言われるだろう。そういう意見は本当によく分かる。

ここでアメリカの一面を知っておくために、以下の史実を述べさせて頂く。
日米外交は、黒船による恫喝外交で幕開けした。そのときアメリカ側は、2本の白旗を幕府に渡した。もしも武力衝突になったときは、この旗を掲げれば直ちに攻撃を中止するというアメリカの思い遣りであった。

日露戦争後は、オレンヂ計画が策定され毎年更新。その計画通りに、日本はアメリカに叩かれることになる。太平洋戦争前、アメリカは時間稼ぎをしつつ対日戦争の準備を整え、用意周到に日本を開戦へ追い込んだという。
そして最後は、2発の原爆が投下された。

近年においてアメリカは、地球温暖化防止の京都議定書、包括的核実験禁止条約、生物兵器禁止条約検証議定案、弾道迎撃ミサイル制限条約などで、拒否もしくは脱退している。イラク戦争では、大量殺戮兵器が存在していなかったにも関わらずイラクを攻撃した。

おそらく中国の指導者は、そういうアメリカの一面を承知の上で、自国存立のために国力を高めてきたのではあるまいか。そうであれば、中国は日本を見ているのではなく、日本を“占領”しているアメリカを注視しているということになる。

そういうアメリカと同盟を強化しないと、中国の膨張を阻止出来ないというところに日本の苦しさがある。安倍首相の焦りは当然だ。我が国は今、米中二大国のせめぎ合いに挟まれ、日本史上最大の危機にあると言っていい。
これから最も外交の厳しい時代を迎えることになるだろう。

では大方針として、どうしたらいいか。短期的には、アメリカの力で中国を牽制しなければならない。だが、いずれ自然と脱米せざるを得ない状況が来るように思う。それは反米というわけではなく離米である。

中期的には、どんなに困難であろうが、やはり祖国国防の自立を目指さねばならない。「自国は自国人が守る」という当たり前の国家になるのである。
日本の自立は、アメリカを助けることにもなるだろう。さらに長期的には、アジア太平洋の平和を日本国が主導するようになりたい。

これからの数十年は、東西文明が交代する文明交代期の、その嵐の最も激しい時期となる。ヨーロッパでは中東や北アフリカからの難民に頭を痛め、イラク難民は400万人に急増している。異常気象は頻発し、地球環境の破壊も進む一方だ。膨張資本主義経済は終焉のときを迎え、次の公益経済への移行が迫られている。人類に戦争をしている余裕など無いはずである。