相互依存状態にある現代文明の脆さに対して、日本人に必要なこと

文明は進歩するほど、その仕組みと内容が複雑化する。複雑化は、相手国が存在しなければ、自国も生き残れないという相互依存関係を高めていく。

特に経済面がそうで、資源や資材、製品の輸出入、人財や労働力の確保等をはじめ、他国の生産力と市場に頼らなければ、自国経済は維持不能という依存関係が形成された。その関係が円滑に機能してさえいれば、世界中が文明の恩恵に浴すことになる。

ところが、互いに依存し合うことで成り立つ関係は、何らかの危機が発生したときに崩れ易い。次第に世界が行き詰まって来ると、我が国だけは生き残ろうとする孤立主義や保護主義が台頭してきて、一カ所のほころびが、やがて世界全体へと波及してしまうのだ。

歴史を観れば、あらゆる文明が崩壊している。現代文明のみ例外とは言い切れまい。今世界は「文明の転換」という、嵐の前の静けさの中にあるという気がしてならない。

文明が滅びる原因は、文明の進歩そのものの中に潜んでいる。文明はある水準まで高度化すると、主要国は社会秩序として老朽化し、社会と人間は軟弱化していく。そうして内が緩んでいるところへ、外から天候不順や天変地異、それに伴う生活難と食糧不足、さらに民族移動が発生してしまえば、ドミノ倒し(連鎖崩壊)のようにあっけなく滅びてしまうのである。

欧州先進国が世界を制覇した時代は過去のものとなり、アメリカも衰退を加速している。欧米の世界秩序にのみ従っていれば、それで事足りた時代はとっくに過ぎ去った。今日本人に必要なのは、混迷する世界を生き抜くための「覚悟と心の強さ」ではあるまいか。

そのために学ぶべきが、兵法とその思想だ。下記は『孫子』行軍篇の一節である。

「平和な態度を取りながら、その裏で着々と軍備を整えている場合が要注意であり、実際に進出して来るに違いない。反対に強硬な姿勢を見せ、今にも攻めて来そうな場合は、本当のところ侵略の意志が無いものだ。」

外交は心理戦なり。戦場で弾を撃ち合うばかりが戦争ではなく、心理戦や情報戦、宣伝戦などから戦いは既に始まっているのである。その心得として兵法家の孫子は、情報収集の重要性と共に、心の裏を読むことの大切さを説いていた。外交上の態度や言葉と、現実の情勢をよく見比べた上で、相手の本心や本音を読み取れというわけだ。

だから「頭はクール、心はホット」でないといけない。真の指導者なら「頭にきた!」ことで引き起こしてしまう闘争が、いかに愚かで被害甚大となるかを知っている。また、冷めた心には、誰も付いて来ないということを体験している。「頭はクール、心はホット」でありさえすれば、相互依存状態が壊れていく時代をも、きっと生き抜いていけるはずだ。そして、政治家や経営者など指導者が持つべき「覚悟と心の強さ」が養われるに違いない。