No.40 『分身の術』は忍術の世界の話

いじけたマイナス言葉は、知らず知らずに運気を悪くする

感情や性格に原因があって、本来は生地にいながら死地に移ってしまうという者には、他にどういうタイプがあるのでしょうか。

自分は完全だと考え、常に上からものを言い、原因を人に擦(なす)り付けてばかりいるような尊大な者は、その中に入ると思われます。そのままでは器量が養われませんから、いくら能力が高く識見に優れていたとしても、ちょっとした摩擦で人間関係が壊れてしまい、結局人は付いてきません。

反対に自分を卑下してばかりいるような人も、死地に向かいがちとなります。謙(へりくだ)る態度は人間として大切ですが、自分を矮小化させるところまで卑屈になってしまったのでは困ります。いじけたマイナス言葉によって、知らず知らずに運気を悪くさせてしまうことになるでしょう。

あるいは、人や世間から助けて貰っていながら、感謝心が薄れてしまうというのも問題です。日常的に支援を受けていると感覚が麻痺していき、いつの間にかそれが当たり前という気持ちになるものです。貰って当然という不遜な感情が生じてくるのです。そうして報恩の気持ちが乏しくなれば、当然のこと支援者は離れていきます。

そうならないよう、日常的に受けている支援の一つひとつを忘れることなく感謝出来るよう努めましょう。そうすれば、今は苦しい「死地」にあっても、必ずや起死回生が可能となるはずです。

今どこにいるべきか、今日は誰と会うべきかという選択が大事

性格としては、自分の力量をはるかに超えるところまで無理して頑張ってしまう人が、死地に移ってしまうことになります。

親切心が旺盛で、頼まれると嫌と言えないタイプなどもそれでしょう。何かの役を頼まれて一所懸命務めれば、成果が出て周囲から感謝されます。それが嬉しくて何でも引き受け、目まぐるしく動いていく内に体調を壊してしまうことがあります。なまじ精力旺盛な人ほど、体力を過信して倒れるまで頑張ってしまい、死期を早めることにもなっていくのです。

幼い頃読んだ時代劇の漫画に、忍者がよく出てきました。忍者は「分身の術」を使って、自分が何人もいるかのように見せかけます。その術は漫画の世界の話であって、同じ人が同時に二カ所にいることは勿論不可能です。

一度に一カ所にしかいられない以上、今どこにいるべきか、今日は誰と会うべきかという選択を大事にしなければなりません。それも無為自然による選び方でなければ、生地の確保にはつながりません。

欲得による計らいではなく、内なる声(=見えない世界の導き)に基づいた判断を大切にせよということです。そのために人間に与えられているのが、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)と第六感(心覚)です。(続く)