No.46 道とは何か、徳とは何か

儒家と道家では、道と徳の解釈が違う

ここで、中国思想の代表的なキーワードである、「道」と「徳」について述べておきましょう。老子に学ぶ上で、外すことの出来ない用語です。

道家(どうか、老子や荘子などの学派)では、「道」を天地自然の原理と捉えています。大は宇宙から小は素粒子に到るまで、その物をそうさせている働きがあります。その内在する原理を、老子は道と呼びました。

儒家(じゅか、孔子や孟子などの学派)も「道」を尊びますが、孔子が教えるそれは、人として踏み行うべき道のことです。仁や義といった、君子として生きていくための理想的精神が、そこに示されています。

道家の天地自然の原理としての道と、儒家の人間社会を成立させる上での道。この違いを理解しておきませんと、思想上の根本的な混乱が生じてしまうことになります。

「徳」もそうです。道家の徳は「先天の徳」を意味します。先天の徳とは、元々持っている「その物らしさ」のことです。それに対して儒家では、徳を「後天の徳」と解釈しています。こちらは修養努力の結果、身に付いた人間力のことであり、それを徳と名付けたのです。

老子が大変大事にしたキーワード

この道と徳を合わせて、「道徳」という熟語になります。当然のことながら、この熟語の意味も、道家と儒家では異なります。道家の道徳は、天地自然の原理としての道と、道が本来持っている生成造化の働き(=徳)を指しています。それに対し、儒家では道徳を、人として正しく生きる上での精神的規範という意味に捉えています。

道家の老子と儒家の孔子は、二人とも道を尊びました。が、こうして意味が大きく違っていたのです。

なぜ老子などの老荘学派を道家と呼ぶのかという疑問も、これで解けたと思います。道家は、天地自然の原理としての道を尊んでいる学派だから、道家と称されたというわけです。

その老子の教えがまとめられた一書が『老子』です。『老子』は、『道徳教』とも『老子道徳教』ともいいます。道も徳も、老子が大変大事にしたキーワードだったのです。その、道や徳についての教えが出ている『老子』第五十一章を見ていきましょう。(続く)