No.55 熱意や器量で負けなければ、回りは必ず付いてくる

しっかりと打ち込まれたものは抜けない

あらゆるものを、そうさせている働き。全ての存在を成り立たせている根本原理。それが「道」であり、あれこれ迷わないで、道に根ざした生き方をしなさい。この根本原理を掴めば、我が身も、家も、郷里も、国も、天下も、何でも上手くまとまると、老子は教えます。

《老子・第五十四章》
「しっかりと打ち込まれたものは抜けない。しっかりと抱えられたものは脱落しない。子孫は、それ(道の不抜の働き)でもってすれば、(先祖の)祭祀を絶やすことはない。

之(道の働き)を我が身に修めれば、その徳はすなわち純真となる。之を我が家に修めれば、その徳はすなわち余る程となる。之を郷里に修めれば、その徳はすなわち長久となる。之を国に修めれば、その徳はすなわち豊かになる。之を天下に修めれば、その徳はすなわち普く行き渡る。

そこで、身を(修める道で)もって我が身を観察し、家を(治める道で)もって家を観察し、郷里を(修める道で)もって郷里を観察し、国を(修める徳で)もって国を観察し、天下を(修める徳を)もって天下を観察するのだ。

我は何でもって、天下がそうであるということを知るのか。それは、こういうこと(道の効果)をもってである。」

※原文のキーワード
しっかりと…「善」、打ち込まれたもの…「建者」、抜けない…「不抜」、
抱えられたもの…「抱者」、脱落しない…「不脱」、それでもって…「以」、
絶やすことはない…「不+※車ヘンに双が二つだがワードに無し」、
すなわち…「乃」、純真…「真」、我が家…「家」、余る…「余」、郷里…「郷」、
長久…「長」、豊か…「豊」、普く行き渡る…「普」、そこで…「故」、
観察…「観」、何でもって…「何以」、そうであるということ…「然」、
こういうことをもって…「以此」

根の浅いテクニックに頼らない

「しっかりと打ち込まれたものは抜けない。しっかりと抱えられたものは脱落しない」というのは、道に根ざしたものの確かさを言おうとした言葉です。表面的な知識に頼ったり、その場しのぎのテクニックに走ったりするのではなく、どっしりと重厚に構えよと諭しているのです。

知識ならば、それを見識に、さらに胆識に深めなさいということです。知識は頭、見識は胸、胆識は腹に対応させられます。単に頭で覚えるのが知識、何らかの意見を言えるのが見識、行動の元になるのが胆識です。

昔から、覚悟することや決断を下すことを腹に例えてきました。「腹を括る」や「腹を養う」、「腹を決める」などがそれです。「しっかりと打ち込む」とか「しっかりと抱える」というのは、腹が受け止め、腹で考え、腹から動くことに他なりません。

また、根の浅いテクニックに頼ることなく、器や徳といった人間力の深いところを大切にせよという教えでもあります。時代の変化によって、あっけなく使いものにならなくなってしまうような知識や技術にすがっていたのでは、たちまち後から来る者に追い越されてしまいます。

たとえ知識や能力で負けたとしても、使命感から来るところの熱意や、器量の大きさから来るところの人間力で引けを取ってはなりません。熱意や器量で負けなければ、回りは必ず付いてきます。そのために必要となるのが、根本原理をしっかり掴んでおくということなのです。(続く)