No.61 内なる強さを赤子に学ぶ

見た目が弱ければ力が乏しいと思うのは偏見

老子は、水の柔軟性や、女性の持つしなやかさ、赤子の純朴さなどを尊びます。水や女性や赤子は、通常弱い立場にあると見られているものです。常識的には、水は岩石より弱く、女性は男性より柔弱で、赤子は大人より虚弱です。

しかし、水滴の集中が岩に穴を開け、女性のしなやかさが男の剛力を退けます。赤子であれば、その無邪気さによって大悪党をも和ませます。見た目が弱ければ力が乏しいと思うのは偏見であり、実は驚くほどの「内なる強さ」を秘めているのです。

人は皆、赤子で生まれますが、誰でも赤子の頃に素晴らしい力を持っていました。第五十五章では、その赤子のような純朴な生命力に復帰することの大切さが説かれています。

精気を充実させ、調和を取る

《老子・第五十五章》
「内在する徳が厚いのは、赤子と比べられるだろう。
蜂やサソリ、まむし(などの毒虫)は(赤子を)刺さない。
猛獣は掴(つか)まないし、猛禽は攻撃しない。

(赤子の)骨は弱く肉は柔らかだが、握る力はしっかりしている。
未だ男女の交合を知らないのに、幼児の性器は勃起する。
それは、精気が充実しているからだ。
一日中大声で泣いても声は嗄れない。
それは調和が十分に取れているからだ。

調和を知ることを常(=道)といい、常を知ることを明察という。
(無理に)生命を増益させようとするのを禍(わざわい)といい、(欲得の)心で気力を使うのを強引という。

物は盛んになれば、必ず衰える。これでは道に外れている。
道でないから早く終わってしまうのだ。」

※原文のキーワード
内在する徳…「含徳」、サソリ…「たい、※萬と虫の合成文字だがワードに無し」、まむし…「きだ、※ワードに無し+蛇(だ)」、刺す…「螫(しゃく)」、掴む…「拠」、猛禽…「攫鳥(かくちょう」」、攻撃…「博」、握る力はしっかり…「握固」、男女の交合…「牝牡(ひんぼう)之合」、幼児の性器…「すい、※ワードに無し」、精気…「精」、充実…「至」、一日中…「終日」、大声で泣く…「号」、声は嗄れない…「不嗄」、調和…「和」、十分に取れている…「至」、明察…「明」、生命…「生」、増益…「益」、禍…「祥」、気力…「気」、強引…「強」、盛ん…「壮」、衰える…「老」、道に外れている…「不道」、早く終わる…「早已」
(続く)