No.75 子供はぐんぐん成長するという事実を忘れてはならない

人間性が硬直化してからでは、基本はつくれない

徳目というものは、きちんと教えれば、成長に従って身に付いていきます。
徳目の意味や、それが大切であることの理由が分かってきたら、それに応じて次第に放っておくようにする。それが教育の手順として、自然ではないかと思われます。

子供にしてみれば、最初は放任されていたのに、高学年になるほど五月蠅(うるさ)く言われるというのでは納得し難(にく)いものです。一貫性が無いというか、筋が通っていないという気がしてきます。「言われなくても、もう分かっているよ」という不満や反発心も生じるでしょう。

自我が芽生えるに従って規制が強まり、身動きが取り難くなるというのでは堪りません。行き過ぎた自由放任主義によって我が儘(わがまま)に育てられた挙げ句、今さら躾なんて難しい年頃になってから、「ああしろ、こうしろ」と注意を受けても遅いというわけです。

また、学年が上がるほど、先輩として後輩を導く場面が増えます。課せられる任務や役割が多くなるのです。だからこそ後輩でいる間に、しっかり基本動作を学んであることが重要です。高学年になってから、慌てて礼儀や作法を一から学び始めても間に合いません。

兎に角、人間性が硬直化してから基本をつくろうとするのでは手遅れとなりかねません。そうならない早い段階で、人に喜ばれることは自分の喜び、自分勝手な振る舞いは恥、人のために生きることは尊い、譲り合いや分かち合いは美しい、親や先祖があって自分がある、といった人間としての基本精神を体得させていきましょう。

一番漢字をよく覚えるのは幼稚園児

話は余談になりますが、漢字教育も早ければ早いほどいいそうです。
一番漢字をよく覚えるのは幼稚園児で、小学校に入って高学年に進むほど、漢字の記憶力は後退するのだそうです。今の教育だと、コンクリートが硬くなってから木枠に流そうとするようなもので、子供にとって漢字教育が“拷問”になっているとも言えるでしょう。

江戸時代では、優秀な子が5歳で四書五経を諳(そら)んじたなどといいます。
それは5歳だから出来たことであり、20歳を超えて成し遂げたことなら、そのほうが驚異だったでしょう。トランプに「神経衰弱」という記憶力を競うゲームがありますが、やはり10歳未満が強いようです。それと似ていると思います。

ところが、幼い子供に難しい漢字の意味は分からない。だから、教えるには早いという意見もあります。それはそうかも知れませんが、たとえ意味は分からなくても、まず覚えるということに価値があるのではないでしょうか。記憶した事柄の意味は後から分かればいいのであり、知らない漢字や言葉を知るということ自体に勉強の喜びがあるものです。

幼い子供は、1年で大人の10年分くらいか、あるいはそれ以上の成長を果たします。教える側の大人は、子供はぐんぐん成長するという事実を忘れることなく、その成長段階に応じて規制から自立への転換を調整していくべきでしょう。(続く)