No.87 見える人には、ちゃんと将来が見えている

場・質・量・時などが合っているかどうか

また、バランスを取るには、時間や空間を考慮することも大切です。
場・質・量・時などが合っているかどうかです。

場であれば、そこに相応しい態度や言葉というものがあります。
儀礼を重んじる場なのか、くだけた雰囲気のほうが似合う場なのかによって、参加者は服装や言葉遣いを選びます。部屋に飾る花や絵、掛け軸もそうです。季節の変化や陰陽の調和を考慮しつつ、空間全体に命を吹き込む飾り方や生け方が、自ずとあるのです。

質で言えば、例えば骨折の治療をしたとしましょう。
まず、患部が動かないよう固定しなければなりませんが、使用するのは木や石膏など硬いものです。
その一方で、皮膚面の保護には柔らかいガーゼや脱脂綿を用います。硬い質、柔らかい質には、それぞれ使いどころがあるのです。それらが合っていれば正しいし、合っていなければ間違いということになります。
同時に、量も考えねばなりません。添え木の長さ、脱脂綿の量などに、適当な長さや量が求められます。

口にするものも同様です。摂り過ぎが注意されている塩分も、質と量が問題になります。塩の質としては自然塩が体にいいのですが、いくら高品質だといっても量が多過ぎたら、やはり健康を損ねます。これらも、量が適切なら正しいし、不適切なら間違いになるわけです。

人生の大略を練る場合、「時流の考慮」が必要

それから、タイミングも重要です。水が欲しいときと、塩分の補給が必要なときを取り違えたら大変です。野生動物は、今何を摂取すべきかを本能的に掴んでいるそうです。人間も、自然と一体になって生きていた頃は知っていたはずなのですが、嗜好品の増加と飽食の中で、その能力を失ってしまいました。

昔、「大きいことはいいことだ」というテレビ・コマーシャルがありました。
やがて時代が変わると、「スモール・イズ・ビューティフル」になりました。
考え方や価値観にも、必要とされるタイミングがあるのです。

人生の大略を練る場合となれば、タイミングをもっと大きくした「時流の考慮」というものが必要になります。今という時が、順境なのか逆境なのかを考えねばなりません。21世紀の今は、東西文明の交代期であり、世界的な逆境の時です。

今が順境ならば、前例をお手本にしながら目の前だけ見つめ、実績をこつこつ積み上げていく人生で概ね済むでしょう。しかし逆境となると、先例はあてになりません。

よく「転換期は先の見えない時代である」と言いますが、決してそんなことありません。前例や先例があてにならなくなっているだけのことです。過去しか見ていないから、先が見えない状態に陥ってしまったというわけです。

見える人には、ちゃんと将来が見えています。佐久間象山にも、橋本左内にも、勝海舟にも、坂本龍馬にも、次の日本が見えていました。遠くを慮り、百手、二百手先を読みつつ、厳しい時代を切り開いていく。それが指導者の任務です。
全員がそうでなくていいのですが、1割から2割くらいは、前衛に生きることに勇気と誇りを持った志士人物が求められます。(続く)