No. 93 ケチが人類を救う!?

◇つつましい倹約が政治の基本◇

それでは、第五十九章の解説をします。つつましい倹約が政治の基本であり、倹約は天地自然の原理に従うことでもある。それが徳であり、徳を積めば無限となる。無限となれば、国を永遠に保つことが出来ると述べられています。

《老子・第五十九章》
「人を治め天に仕えるには、つつましさに及ぶものは無い。
ひたすらつつましいことを、早く(道に)従うという。

早く従うこと、これを積み重ねる徳という。
積み重ねる徳であれば、則ち打ち勝てないことは無い。

打ち勝てないことが無ければ、その限界を知られない。
その限界を知られなければ、それで以て国を保有することが出来る。

国の母を保有すれば、以て長久となることが出来る。
これを深い根、固い根、長い生、久しい見守りの道という。」

※原文のキーワード
仕える…「事」、つつましさ…「嗇(しょく)」、及ぶものは無い…「莫若」、
ひたすら…「唯」、早く従う…「早服」、積み重ねる徳…「重積徳」、
打ち勝てない…「不克」、知られない…「莫知」、その限界…「其極」、
保有する…「有」、出来る…「可」、国の母…「国之母」、深い根…「深根」、
固い根…「固柢」、長い生…「長生」、久しい見守り…「久視」

◇人類の活動は、地球の持っている許容量を超えるところに到達◇

人を治めるにも、天に仕えるにも、その基本は吝嗇(りんしょく)、則ちつつましさにあると老子は教えました。吝嗇にはケチという意味があります。
ケチと思われるくらい無駄を排し、倹約に努めてこそ、天地自然の原理である道に、早く従うことが可能になると。

都市の発生による文明生活は、必ず自然破壊を伴います。都市文明を支えたのは、何よりも農業でした。食糧の生産力が人口増加をもたらし、都市を生んだのです。

工業化社会こそ自然破壊の元凶であると思われがちですが、実は農業の発達と共に環境破壊が起こりました。自然を変えなければ、大規模な農業は営めません。人間社会には、どうしても天・地・水などのバランスを壊してしまうサガ(性)があるというわけです。

それでも人口が少なく、文明の自然への依存度が低い内は大丈夫でした。
21世紀の今、人類の活動は、地球の持っている許容量を超えるところにまで到達しています。膨張資本主義、物欲文明が限界に至ったのです。

であるからこそ、つつましく生きることが、心得として大事になるわけです。
「地球に優しい」というのがそれであり、あらゆる分野に渡って、地球圏のバランスを損なわないよう留意し、人類の生存が可能な新文明を創らなければなりません。地球と人類による共生文明の創造です。(続く)