No.111 小国を安心させるのが、大国の役割

◇大国は下に位置することで、天下を集めることが可能になる◇

立場が上がるほど謙虚になり、表面的な覇気が消えていく。その半面、何とも言えぬ渋い味わい、玄妙にして内から滲み出るような氣力が漲(みなぎ)ってくる。それが道家の理想とする人物像です。

人間ばかりではありません。国家にも「格」というものがあります。
人格ならぬ「国格」で、これが上がるほど、小国に対してへりくだるようでなければならぬと老子は諭します。

「大国は(川ならば)下流で、天下の交わるところであり、天下の女性でもある」と。大河や大海は、無数の谷川の下流に位置しています。下にいれば、多くの水を集めることが出来ます。大国も川と同じく下流にあることで、天下を集めることが可能になるというのです。

「天下の交わるところ」の原文は「天下之交」です。「交」には集中の意味があります。何を集中させるのかというと、回りの小さな国々と、そこに住む諸国民や諸民族です。

◇大国は天下における女性である◇

そして、大国は天下における女性でもあります。女性は「谷」の性格を持ち、天下の谷川を合流させるように、自ずと男たちを慕い寄せます。同様に大国は、その女性性によって回りの国々を合流させていくのです。

さらに老子は、「女性は、常に静かでいながら男性に勝つが、静で以て下位にいるからだ」と述べます。そんなわけはない、女性のほうが姦(かしま)しくて騒がしいはずだ、なんてはっきり言わないで下さい。武器を取って戦う男たちに比べ、女性は後方で静かに待っています。その受け身でいることが、却って男性を惹き付け、男たちを遠くまで操ることになるのです。

こういうことから、大国は女性であるという自覚の元に、あくせくしないでどっしりと構えよ。そして、小国に対してへりくだれば、小国は安心して大国に従うようになるものだ。また小国も、大国に対して落ち着いて敬意を表すれば、大国から信頼を受けられるようになると。これが、道家流の外交の心得です。

則ち、大国は下ることで小国を集め、また小国も下ることで大国と共に生きられるというわけです。(続く)