No.112 大国は、徳で以て小国に恩恵を与えよ

◇大国が生まれるところ、小国に適したところ◇

自然風土や地理的環境によって、大国が繰り返し生まれるところと、成長しても小国に限定されるところがあります。広々した大陸なら大きな国の、小さな島なら小さな国の誕生に適しており、場所に応じた規模というものが自ずとあるのです。

また、大河も重要でした。黄河やナイル川など、大きな河の流れているところに古代文明が発生しました。大量の河の水があれば大規模農業を起こせますし、穀物の収穫が豊かになれば多くの人口を養うことが出来ます。人口が増えれば、そこが国をまとめる都になるのですから、大河の存在は大国を生む上で必須の条件でした。

やがて航海術が発達すると、海洋進出に向いているかどうかが問題になりました。大航海時代のポルトガルやスペイン、産業革命以降のイギリスがそれで、大西洋に面していることが「地の利」となり、世界に冠たる海洋大国となったのです。

21世紀の今、中国が太平洋に進出しようとしています。それは、海洋国家が大国の条件であることを知っているからです。中国にとって、ハワイ以西の制海権を握り、太平洋を米中で二分したときが、大国の完成期となるのでしょう。

◇大国は、一体何を望んでいるのか◇

では、そもそも大国は、一体何を望んでいるのでしょうか。老子は「大国というものは、沢山の人民を養おうと欲しているに過ぎない」と言います。
つまり、勢力を広げ、より多くの人々を影響下に置きたいのだと。

それが他国の存在を脅かさないのであれば、「小国は(大国に)入り従い」、安心して「人民の役に立とうと」することが出来ます。

大国は徳で以て小国に恩恵を与え、小国は矜持(プライド)を保ちつつ大国を敬重する。そうして「各(おのおの)その欲するところを得て」いけば、両者は共存することが可能となるのです。

ところが、大国が“世界統一”を目指して小国を併呑し、固有の文化や言語に対して様々な圧力や制限をかけてくるとなると、小国としては決して従えなくなります。(続く)