No.122 人間関係の亀裂は、初期段階で“治療”しよう

◇難事はまだ簡単な内に対処し、大事はまだ細かい内に処理せよ◇

人間関係の亀裂というものは、案外小さな事から生じます。きっかけは挨拶をし忘れたことであったり、御礼を言いそびれたことであったりします。

そして「こいつは俺を無視しているな」とか、「有り難うの一言も言えない程度の人間なのか」と思う(思われる)ことになります。既に疑惑が起こってしまったわけで、そこへ同様の現象がもう1~2回重なるとダメになります。

それ自体は何でもない普通の事であっても、一旦不信感が生まれてしまえば、そのバイアスによって、新たな出来事をさらに悪いほうへ受け取って(受け取られて)しまう。そういう経験は、誰にでもあるはずです。特に第三者から否定的な言葉を聞いている場合、一層その偏りがきつくなってしまいます。

そうならないよう、老子は「難は其の易(やす)い内に図り、大は其の細の内に為せ」と教えました。難事はまだ簡単な内に対処し、大事はまだ細かい内に処理せよと。理由は「天下の難事は必ず易い内に起こり、天下の大事は必ず細の内に起こるものだ」からです。

歯科治療に譬えれば、虫歯は初期段階で治療せよということになります。軽ければ一回の通院で終わります。特に自覚症状が無くても、定期的に検診すれば、さらに「細の内に為す」ことになるのです。

◇反りの合わない相手ほど、意識して言葉を掛けよ◇

人間関係の亀裂も、初期段階での“治療”が肝腎です。会社や組織の部下に対してなら、「いつもの元気が無いな」とか「そろそろ悩み始めたな」というときに、早期に面談をするといいと思います。

学校の生徒や、講座や習い事の受講生についても同じことが言えます。教師や教授は、生徒に気を配り、声を掛けるのが大切な仕事の一つです。特に、苦手な生徒や、何となく反(そ)りの合わない雰囲気の相手であるほど、意識して定期的に言葉を掛けねばなりません。(※「反りが合わない」は、刀と鞘の反りが合わないことで、仲が上手くいかないという意味)。

不思議なもので、繰り返し何度も声を掛けて(掛けられて)いる内に、自分も相手も心を開いていきます。いつの間にか苦手意識が薄らぎ、馬が合う相手に変わるのです。

こうして「易い内」「細の内」に対応することで、「(道家の)聖人は、終生大を為そうとしない」で済むことになります。それでいて「よく其の大を成し遂げてしまう」ことにもなるのです。易い内に治めるから全然大事を為していないように見えるが、実は大仕事を難なくこなしているというわけです。(続く)