No.128 大きな成功の要諦は、小さな事を成功するまで続けるところにある

◇「辛酸を嘗めた昔の苦労が、その後の自分の基礎になる」◇

松下政経塾「五誓」第一条「素志貫徹の事」の中に、「成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」という言葉があります。塾では、毎朝これを唱えました。成功の秘訣は、成功するまで諦めずに続けるところにあるという意味であり、指導者の持つべき大切な心得として、松下幸之助塾長が殊の外重視された精神です。

私たちは成功者を見るとき、つい華やかなところにだけ目を遣ってしまいます。颯爽(さっそう)と歩く凛々(りり)しい姿や、自信に満ちた笑顔と振る舞いに目を奪われ、その人に下積み時代の苦労があったことや、やることなすこと裏目に出てしまう惨(みじ)めな日々が存在したことなどには目を向けません。

誰でも、苦難に負けないで地道な努力を続けていると、少しずつ理解者や協力者が現れてきます。やがて時代と自分が合ってきて、道が開かれていくのです。

問題はそこまで辛抱出来るかどうかであり、成功者が異口同音に口にする言葉があります。「辛酸を嘗めたあの頃の苦労が、その後の自分の基礎になった」。「あの苦難のお陰で、今の自分がある」。「いきなり成功していたら、却って上手くはいかなかったと思う」などがそうです。

◇まず鍛えるべきは人間そのものであり、養うべきは素養や人格◇

一般に能力の高い野心家ほど、早く成功したがりますし、自分も大成者と同じように出来るに違いないと過信しています。巧くやりたい、認められたいという向上心は立派なのですが、爪先(つまさき)立っているようでは頂けません。

まず鍛えるべきは人間そのものであり、養うべきは素養や人格です。いきなり役職等に就いて偉くなることよりも、まずは“雑巾掛け”から心掛けましょう。筆者も若い頃、朝一番早く出社しての清掃、湯沸かし、来客へのお茶だし、送迎などから務めました。

それから、歴史や古典の精読を厭わない真面目さが欲しいものです。素養や実力も無いのに、若くして世に出てしまうことほど恐いことはないということです。

長州の志士であった高杉晋作などは、爆発的な気迫で倒幕への道筋を切り開いた、第一級の志士英雄です。一見、馬力だけで周囲を引っ張った豪傑のように見えますが、本人の行動は誠に細心であり、常に冷静さに満ちていました。

攘夷のため焼き討ちをするときなどは、忍び込みながら目印を付け、実行後はそれに従って一気に逃げたとのこと。あるいは、刺客に襲われそうなときは、襲われる前にいち早く逃げ、いつも無事でした。

先のことを考えないで闇雲に猪突猛進し、あっけなく倒れて終わるようなタイプとは全然違っていたのです。残念なことに若くして病死してしまいましたが、老荘の道家思想にも通じており、人生を深く達観していた人物でした。

その晋作にも、なかなか自分がやるべき事が見つからず、悶々とした日々を送っていた時期がありました。それが、彼にとって貴重な内省の時間になったはずです。彼は、よく学んで自己研鑽に努めており、和歌や漢詩にも大変秀でておりました。

◇焦らず年輪のように着実に成長させるほうが、実は早道◇

今、調子に乗っている人ほど、(なかなか分かり難いことでしょうが)いっぺんに完成させようとは思わないことが肝要です。焦らず年輪のように着実に成長させるほうが、実は早道だということがよくあります。そういうことを理解出来るには、ある程度の年齢になることが必要なのですが、晋作の如く可能な限り若い内から意識しておいて貰えたらと希望します。

それを教えようとして老子は、「一抱えの大木は、毛先(ほどの芽)から生ず。九層もの高台は、一盛りずつの土の積み重ねから起工する。千里の行程は、足下(の一歩)から始まる」と述べました。大木は小さな芽から育ち、高層の塔は「ひともっこの土」から建ち、千里の道も一歩からという次第です。

さて、「成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」という師匠の教えに、解説の意味で「大きな」と「小さな」という言葉を付け加えてみました。「大きな成功の要諦は、小さな事を成功するまで続けるところにある」と。
今日は今日の小さな成功があり、それを積み重ねれば、やがて大きな成功に至るというわけです。(続く)