No.137 晋作のような人物が、100人出てきたら日本は変わる

◇幕末志士たちも、道家の教えを身に付けていた◇

幕末の志士たちが活躍出来たのも、道家の教えを身に付けていたからです。その代表格である高杉晋作の漢詩を紹介します。

「万物元来始終あり
人生況(いわん)や百年の躬(きゅう)少なし
名を競い利を争う営々として没す
識(し)らず何の楽しみか此(こ)の中(うち)に存せむ(ぞんぜん)」

意味は次の通りです(意訳:筆者)

元々あらゆる物に始めと終わりがあり、
言うまでもなく人間に百年もつ身体は少ない。
名誉を競い利益を争うことに夢中になったまま死んでいき、
そこに何の楽しみが在るのか私にはよく分からない。

◇周囲からの軽薄な称賛に浸っていられるときではない◇

この漢詩には、晋作の澄んだ心境がよく表されています。とうに私利私欲を超えていることによる達観です。晋作ばかりでなく、西郷にも海舟にも、この老荘的達観がありました。

一流の志士たちは、よく苦難に耐え抜きました。仲間から理解されない孤独や、誤解されて怨みを買うことの辛さにも負けませんでした。

日本の危機にあたって、最早(もはや)現世での物質的成功や、周囲からの軽薄な称賛に浸っていられるような心境ではなかったのです。そういう世間一般的な楽しみの段階は、とっくに卒業していると。

晋作は満27歳8カ月でこの世を去りました。「死んだなら釈迦や孔子におひついて道の奥義を尋ねむとこそ思へ」。こちらは病床での歌です。晋作のような人物が(特に政治分野に)100人出てきたら、きっと日本は変わるでしょう。

老子は、こういう精神を元に「昔の(天地自然の原理である)道をよく修めた者は、人民を賢くさせるのではなく、愚かにさせようとした」としたのであり、儒家だけの政治で「人民を治め難いのは、(賢しらの)智恵が多いからだ」と訴えたという次第です。(続く)