No.37 2・6・2の法則と、徳治・礼治・法治

◇2人は積極的、6人は大勢順応、残りの2人は消極的◇

「2・6・2の法則」を、どこかで聞いたことがありませんか。10人の組織なら、2人は積極的に動き、6人は大勢(たいせい)に従い、残りの2人は消極的、または反発するという分類です。自燃性2割、可燃性6割、不燃性2割と説明する人もいます。

統計的に細かく計算した結果ではないものの、多くの経営者や識者が、経験則として似たような見解を述べております。江戸前期の兵学者・山鹿素行は、1・8・1の割合で説明していました。「人は大方十人の内八人は普通(なみ)の者、一人は才知あり、一人は下愚なり」と。

これを徳治・礼治・法治にあてはめると、概ね上(うえ)2割には徳治、中(なか)6割には礼治、下(した)2割には法治で臨むということになります。徳治は徳(指導者の人徳や品格)による政治、礼治は礼(儀礼)による政治、法治は法(法律)による政治です。

礼治について補いますと、心を形に表した様式が礼です。これを忘れると、多くの人は恥知らずに思われて辛い気持ちになります。それが、お互いの怠惰な心を抑制させる効力を生み、礼が潤滑油ともなって社会が良く治まるということです。

◇それぞれへの対応◇

それぞれへの対応ですが、仁や義の精神で積極的に発言し、常に責任ある行動を取れる上2割の者に対しては、こちらも徳治で対すれば上手くいきます。

上2割ほどの徳性は無いが、仁や義が理想であることを知っており、礼に外れると恥を被るということはよく分かっている。天下国家を背負って生きていくほどの志は無いが、世の中が平和で発展して欲しいと願っている。ときに魔が差すこともあるが、大胆な悪人になるほどではない。それが中6割の生き方で、これに対しては礼治で向かえば良く治まります。

これが下2割になると、徳を理解せず、礼を無視し、決まりを守らず、それらを恥とも思いませんから、既に礼治では追い付きません。しかし、余程の大悪人でも刑罰は恐れるものです。従って下2割には、法治で応ずるのが良策ということになります。

そして、上2割が指導的立場に就き、中6割がそれに従うようになれば、安定した秩序が形成されてまいります。逆に下2割の扇動に中6割が付いていくようになると、組織はまとまりがつかなくなって壊れていきます。国家や会社、学校の教室も概ね同様です。

◇2・6・2の、さらに外へ追い遣られている正義派◇

さて、ここに注意点があります。消極的な下2割とは全然違うのに、正義感の強さを嫌われたために身動きが取れなくなり、下2割であるかのように誤解されてしまう人が少なからずいます。組織の問題点を目の当たりにすると、相手が上司であろうと実力者であろうと黙っていられない。苦言や直言を遠慮無く口にしてしまうという正義派で、彼らは疎んぜられて外へ外へと追い遣られてしまうことになります。

冷や飯を食わされている正義派は、その多くが嫌われ者です。でも、組織の気の緩みを引き締めてくれる大事なメンバーです。そういう者こそ、危機に陥り、困難を乗り越えていくべきときに、身を挺して実力を発揮してくれる傑物なのです。

だから、これを闇雲に排除することがないよう、よく目を掛けてやる器量人が上役にいなければなりません。歴史上の人物の場合も、偏屈ながら大活躍した者がおれば、その側に必ず器の大きい理解者がおりました。勝海舟や秋山真之(日本海海戦の名参謀)など、皆そうです。(続く)