No.48 堅いものや強いものほど折れ易く、滅びの元になる

◇切符を買う窓口で、とんでもない対応に出くわす◇

JRがまだ国鉄と名乗っていた頃、切符を買う窓口で、とんでもない対応に出くわしたことがあります。関東のある新幹線が停車する駅の出来事ですが、窓口が2つあって、客がそれぞれ10人くらい並んでいました。

もう数人で筆者の番になるというとき、接客をしていた駅員が、いきなりバーンと板を窓口に立て掛けて、室の後ろに下がってしまったのです。板には「隣の窓口をご利用下さい」と書いてあります。その駅員は、にやにや笑いながら椅子に座り、ふんぞり返っていました。

駅員は時間が来たから仕事を止めたのでしょうが、並んでいた客には全然お構いなし。「この窓口は間もなく閉まります。恐れ入りますが隣にお並び下さい」といった誘導があるならまだしも、そのときは何の前触れもありませんでした。駅員にしてみれば「指示された時間まで仕事をした。だから責任は果たした。あとは自分の知ったことではない」ということなのでしょうが、あまりにも自己本位な態度でした。当然のこと客は皆、憤慨していました。

かつての国鉄は、その硬直ぶりから「死んだ組織」の典型になっていたのです。新聞で見たのですが、やはり関東のある駅で、駅員が使うトイレットペーパーは、助役が買いに出るというのが暗黙の了解事項になっていました。助役の本来の役割は、側近として駅長を助けることにあるはずですが、部下であるはずの駅員の使い走りに成り下がっていたのです。

お客様を大切にし、安全に気持ち良くご乗車頂くという精神が、その当時の国鉄の理念にあったのでしょうか。あるなら、それが浸透することで「生きた組織」になったはずですが、実態は全くその逆でした。

◇原点を忘れず、目的に照らしながら柔軟に対応しよう◇

仕事や活動の原点を忘れず、目的に照らしながら柔軟に対応しているかどうか。これを、今一度自問自答してみましょう。それが出来ていれば、人は育ち、組織としての生命力が高まるはずです。

反対に、理念が無い(生かされていない)状態のまま、規則だけが次々決まっていけば、メンバーは身動きが取れなくなっていきます。規則ばかり気にし、細かいことに拘り、決まりにのみ忠実な者しか残らなくなるでしょう。

老子は「人が生きている間は柔らかくて弾力性があるのに、死んでしまうと堅く強(こわ)ばっていく。草木も生きている間は柔らかくてしなやかなのに、死んでしまうと枯れて萎(しお)れてしまう」と言いました。「だから、堅くて強ばっているのは死の仲間であり、柔らかくて弾力性があるのは生の仲間となる」とも。それは、個人にも組織にも当てはまることです。

「こういうことから、武器は剛強によって滅び、木も剛強によって折れてしまう」という言葉は、堅いものや強いものほど折れ易く、滅びの元になっているという実態の指摘です。そうして、結局「強大なものは(滅んで)下に位置し、柔弱なものは(却って)上に位置する」ことになるというのが老子の主張です。(続く)