No.52 心配することが社長の仕事

◇真の君主や王者◇

天下に水よりも柔弱なものはなく、柔弱であることによって、水は何でも受け入れてしまいます。その何でも受け入れる性質によって、本当に勝つのは水であると老子は説きました。

これを人間に置き換えれば、国の恥辱や不幸など、人の嫌がることをも受け入れてしまうのが、水の如き真の君主や王者の役割ということになります。

松下幸之助翁は社長を務めていた頃、次のように社員に話したそうです。「みなさんは仕事の上での心配ごとがあったら、遠慮なくぼくにいってきてほしい。そもそも社長というのは心配する役なんだ。心配することが社長の仕事だ。

だから小さい心配は課長の人がやる。それよりちょっと大きい心配は部長がする。けれども『これは大変だ』というような大きな心配は社長である僕が心配しなくてはいかん。」(松下幸之助著『人事万華鏡』PHP文庫23ページ)。

社長は「心配引き受け係」であるから、誰よりも心配が多くて当然。心配があってこそ、トップの役割が果たされているということになります。そして、その心配は、水の如く溶かし込んで浄化していけばいいのです。

◇天下に水より柔弱なものはない◇

《老子・第七十八章》
「天下に水より柔弱なものはない。しかも堅強を攻めるのに、之に能(よ)く勝るものはない。それは(柔弱な本性が)易わらないからである。

弱が強に勝ち、柔が強に勝つ(という原理)は、天下で知らない者はない。だが能く行う者もない。

こういうことから(道家の)聖人は言う。国の恥辱を受ける者を社稷(しゃしょく)の主といい、国の不幸を受ける者を天下の王と為すと。正しい言葉は反しているかのようだ。」

※原文のキーワード
こういうことから…「是以」、言う…「云」、恥辱…「垢」、不幸…「不祥」、反しているかのよう…「若反」 (続く)