No.53 堅強な相手を攻めるのに水に勝るものはない

◇本質が積もり連なったのが水(みづ)◇

青く輝く地球は水惑星であり、生命体は水によって生かされています。
生き生きしていることを瑞々(みづみづ)しいというくらい、水は命の根源となっています。

大和言葉では水のことを「シ」音で表します。雫(しづく)、滴(したた)る、潮(しほ)、清水、湿るなどの言葉がその例です。親が子どもにオシッコをさせるときに「シーシー」と声を掛けるのも同根の言葉でしょう。これらは、シーという水の流れる擬態音が元になっていると考えられます。

では、なぜ水のことを「シ」ではなく「ミヅ」と言うのでしょうか。現代仮名遣いでは「みず」と書きますが、本来は「みづ」が正しい表記(本仮名遣い)です。

「ミ」は実や身のミで、そのものを構成する本質や実質を表します。「ヅ」は「ツ」の濁音(意味が強まる)で、ツには続く、繋(つな)ぐ、積む、連なるなど、連続の意味があります。則ち、本質が積もり連なったのが水(みづ)なのです。そして、水という実質が充満すればミツル(満つる)ことになるというわけです。

◇丸い器には丸く、四角い器には四角く収まる◇

老子は「天下に水より柔弱なものはない」と語りました。水はあらゆる物を溶かし込み、どんな所にも浸透する柔軟性を持っています。容器がどんな形状であれ、丸い器には丸く、四角い器には四角く収まります。

しかも、一点に集中して滴り落ちる水滴が、やがて岩に深い穴を開けてしまうように、堅強な物を攻めるのに水に勝るものはありません。水にそういう働きがあるのは、その柔弱な本性が一貫して易わらないからだと老子は説明しました。

敵の城を攻めるのに水攻めという方法がありますが、これも水が堅強な相手を倒してしまう例です。水は、どんなに細かい物や小さな所にも、平気で浸透する力を持っています。そして下方に溜まります。水が堅くて強い物であれば途中で滞ってしまいますが、柔弱であるが故に、堅強な敵城をしっかりと囲んで勝利することになるのです。(続く)