NO.57 経営の神様が一番よく見た夢

◇心配するのは楽しいことではない◇

「心配は重要な社内情報」だと述べましたが、心配は辛いことですから、これを積極的に好む人はいません。松下幸之助翁も心配を喜んでいたわけではなく、「楽しいことではない」とはっきり言われていました。

「心配するというのは一面それなりに大変なことであり決してそれ自体は楽しいことではない。下の人から心配を持ってこられれば、やっぱりその日はそれを考えると晩の食事もおいしくない。特に私は多少神経質なところもあるから、あれこれ考え出すと、夜もなかなか寝つかれない。そういうことがしょっちゅう」あったとのことです。(松下幸之助著『人事万華鏡』PHP文庫25ページ)。

経営の神様と呼ばれた松下翁が一番よく見た夢は、なんと会社が倒産する夢だったそうです。まさに心配の極みです。「多少神経質」どころか、実際はかなり神経質な人だったのではないかと思われます。

◇何の心配も無く気分良く過ごせる日が、一年の内に何日あるのか◇

心配が気になって、晩のお酒や食事が美味しくない。そういうことは経営者の日常です。あの問題さえ起きていなければ、この心配さえ無かったならば、今日も笑顔で家に帰り、気持ち良く子供と遊び、陽気に晩酌をしながら野球やサッカーをテレビで観戦し、心から充実した一日を終えることが出来たのに、というのが経営者の悲しい心境です。

果たして忙しい経営者にとって、何の憂いも心配事も無く、気分良く過ごせる日というのが、一年の内に何日あるのでしょうか。あったとしても、ほんの僅かしかないのが経営者人生というものでしょう。

そうであれば、心配は心配として受け止め、常に何らかの問題を抱えながらも、その中から同時に楽しみや喜びを見出していかねばなりません。心配を解決していくプロセスから楽しみを感じ取り、憂いを使命感に転化することから喜びを感じ取るといった達観に、経営者の生き方のコツのようなものがあるのだろうと思われます。(続く)