No.63 信用出来る相手を選んでいけば、商売は繁盛する

◇代金を即座に請求したら不粋◇

さて、話を京都の商いに戻します。花街では、花代(代金)をすぐに請求しないのだそうです。即座に金銭の授受をするのは大変不粋なことであり、何ヶ月も経ってから請求書を送るか、集金に伺うのが一般的であったのこと。

一回分は「貸し」の状態にしておくということもあるらしく、それによって客をつなぎ止めておくのが商いの秘訣とされていました。宿坊(花街の行き付けのお茶屋)に付け(未納金)があれば、客はそれを気にしてくれます。「近いうちに寄らなければいかん」ということになって、また来てくれるのです。(「貸し」の話は、京都研究家の相原恭子氏のご著書『京都花街もてなしの技術』小学館198ページを参考にしました。京都を深く知るための好著です)。

京都の花街は、何代にも渡ってお付き合いが続いてまいります。ある京都の老舗企業の経営者から聞いた話ですが、父親に連れられて子供の頃から祇園に通い、学生の頃などは、馴染みのお茶屋に寄っては昼寝をさせて貰えるほど、身近な存在だったのだそうです。

そういう長いお付き合いは、信頼が前提となります。信頼する人のご紹介だから新しい客を信用し、先代・先々代からのお付き合いだから、その子とのご縁も大切にするという、信頼・信用の連鎖があるのです。

そして、紹介者も慎重でなければなりません。紹介した者の花街での振る舞いに対して、連帯して責任を取らねばならないのです。

◇花街で信用されたら、商売も信用される◇

知人からは、こういうことも耳にしました。花街で信用される人は商売も信用され、花街で信用されなくなったら商売でも信用されなくなると。

「信」という漢字は、人の言と書きます。人の言葉が信じられるから「信」となり、大和言葉ではこれをマコトといいます。「信」を音読みしたら「しん」、訓読みすれば「マコト」です。

マコトのマは、真(マ)、正に、的、学ぶ、丸いなどのマで、真理を表します。コトは「言」であると同時に「事」でもあります。マコトは、真言であり真事です。言葉が事実となるから、誠(言うが成る)になるというわけです。

お金の「貸し」や「借り」はトラブルの元だと先に述べましたが、信用があれば、むしろ絆になるのです。信用出来る相手を選んでいくということは、全ての商売の繁盛の基本ですね。(続く)