No.90 経済危機は、ドミノ倒しのように世界全体に波及するのか

◇お金を回すため、成長を止めてはならない…◇

21世紀の今、一国の経済が混乱したら、その国の政治が危機に陥ると共に、動揺はたちまち他国に波及します。貿易や投資を通じて、互いに相手国を必要とし合っており、外交上は対立関係にありながら経済では抜き差しならないという、相互依存の関係が世界全体に出来ているのです。

小国の財政不安が世界経済全体に影響を及ぼしてしまう今、互恵的経済関係が第一に重視されるようになり、昔に比べて戦争が起き難くなってきました。中東のような不安定で紛争に利がある地域を除けば、もはや戦争をしても得にはならず、これを避けようとする意志が世界中に働くようになったのです。

かつては、食料と資源・エネルギーの確保が、国家の存立と国民の生命を守る基盤でした。今も基本は同じですが、経済活動によるマネーの動きにも重きが置かれるようになりました。お金を回すため、いかにして成長を止めないよう図るかに、世界中の指導者が頭を痛めるようになったのです。

このまま経済のグローバル化が絆を深め、世界から永遠に戦争が無くなって欲しいものですが、その世界経済自体が危なくなってきたのではないかと心配でなりません。利益が交錯し共存関係が深まった世界経済によって、国々が平和にまとまるのか、それとも膨張資本主義経済の破綻によって一気に世界が転換するのかと。

◇境界線に“口利き屋”の議員が割り込んで来る◇

膨張資本主義が破綻を導くかも知れない要因に、各国が抱えている財政赤字があります。世界的に財政赤字が膨らむ原因となっているのが、「政治による保護や手当」を煽る欲望民主主義政治と、それを求める国民心理です。

公的に解決しなければならない課題に対して、なかなか行政の手が回らない。社会保障によって救うべき問題なのに見捨てられたまま。そういう無情な現実がある一方で、幅広く役所が引き受けてしまって行政コストが嵩(かさ)んだり、自立を促すべき人に自助努力を促せなかったりして、結果的に財政赤字が際限無く膨らんでいく元になっているという事実もあります。

「生活保護を受けながらパチンコに通う」といった実態は、どの自治体にも起こり得ることです。本当に行政が対応すべき相手なのか、それとも個人の自立力に任せればいい程度なのか。その判断は簡単ではないでしょうが、国民の独立自尊の精神を損ねさせないためにも、もっと政治が毅然とした態度を取らねばならないことは言うまでもないことです。身勝手な有権者に対して、冷静に叱れる政治家が出て欲しいと。

問題は、その境界線に“口利き屋”の議員が割り込んで来ることです。有権者の味方のふりをしながら、実は自分の基盤と自派の勢力拡大を目論み、結果として財政赤字を招いて行政を危機に陥れ、さらに国民の不満を煽っては社会の堕落を導くというような、半徳議員の存在が問題です。

◇世界経済が戦争を防いでいるという状態も、実は大変危うい◇

日本も、国債を発行して借金を重ねなければ予算が組めない状態が長く続いています。個人が借金を減らす場合は、努力して収入を増やし、我慢して支出を減らせばいいのですが、国家は個人よりも複雑です。

これから益々少子化が進み人口が減っていきますから、経済活動が減衰し、国家の収入は萎みます。また、いっそうの超高齢化によって社会保障費が増大します。

高齢社会を迎えた理由は、医療・食事・家屋(冷暖)・衛生状態などが良好になったことにあり、それは「人工的な長命化」であるという見解を耳にしました。率直に言えば、弱っても死ねない人工長命社会が作られたのだと。

健康だから長生きした昔と違って、今は不健康なまま生き長らえていく時代です。そういう世の中を作ってきたのが、膨張資本主義や欲望民主主義だったのではないでしょうか。

もしも国家予算が組めなくなれば、経済が大混乱となり、国への信用が失墜します。経済規模の大きい日本の動揺は、国内だけでなく、直ちに世界に激しい衝撃を与えます。

自国の混乱が他国に影響を及ぼすのは、どの国にも言えることであり、そうしてみると、相互依存で成り立つ世界経済が戦争を防いでいるという状態も、実は大変危ういものであることが分かります。相互依存による平和は、裏返せば互いに危ない状態でもあり、ちょっと揺らげば、ドミノ倒しのように危機が世界全体に波及する恐れがあるのです。(続く)