No.1 はじめに「日本人の精神の本流を取り戻せ!」

下記連載は、昭和2年出版の、文部省認定・林平馬著『大國民讀本』の内容をこども向けに“翻訳”したものです。戦前の日本の実態をよく知り、これから祖国再生を進める上で、心得とすべきことが沢山出てまいります。
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人間は誰だって平和が好きです。平和は人々の最高の願いです。ところが世界の実情(じつじょう)は、争いと不安の中にあり、いつも動揺(どうよう)しています。世界は今、暗い雲に覆(おお)われたまま行き詰まっている状態(じょうたい)です。

これを取り払って、すべてを照らすのは、日本が神様から与えられた役割です。それをしなければ国を興(おこ)した意味がなく、日本という国の存在理由を否定することになります。

さて、最近の国民の意識(いしき)を見渡しますと、この世界的な使命(しめい)を忘れ、右や左に傾いていて、この先どういう方向に向かうのかよく分かりません。世の中がとても混乱しており、本当に不安になります。

せっかく義務教育を受けても、卒業してしまうと、熱心に努力し、正直で正義を尊(たっと)び、優しさと勇気を持って生きようとうとする心を段々(だんだん)失います。さらに上の学校に進むと、どうして親孝行(おやこうこう)しなければならないのか分からなくなり、自分だけよければいい、自分だけ儲(もう)かったらいいというような、自分勝手な考えに陥(おちい)っていきます。そうして、世のため人のために生きようとする心が失われていきました。

また、政治に関心のある者は、誰かを激(はげ)しく攻撃(こうげき)する演説を聞いたり、厳(きび)しく批判(ひはん)する内容が書いてある雑誌を読んだりすると、すっかり気持ちが、そのほうへ動かされてしまいます。やがて何が善くて何が正しいかの判断(はんだん)がつかなくなり、世を惑(まど)わす悪人たちは、思うままに力を振るうようになります。

そういうときに大切なことは、一人ひとりが自分の考えを持つということですが、困ったことにみんな浮ついていて、心を磨き高めるための話は聞こうとしてくれません。それなのに、心に悩みを持たない人は、一人もいないくらい社会が病んでいます。

ある人は右を振り返り、またある人は左をながめ、キョロキョロするばかりで、どっしりとした信念(しんねん)というものがありません。本当に残念であり、堂々(どうどう)とした日本国民は、どこかへ消え去ったのでしょうか。その原因は、すべての国民に、立派な日本人になるための「精神の本流(ほんりゅう)」が流れていないことにあります。

これは、日本のあらゆる問題の根本であり、とても重大なことです。もしも、このまま放っておけば、私たちは日本建国(けんこく)の大きな使命に立つことはできません。いつの間にか他国の思う通りに操られ、日本の国も国民の生活も破壊(はかい)されることになるでしょう。

私はずっと、このことを心配してきました。熱い心で国を救う大思想家が一日も早く現れて、すべての国民を指導し、進む方向を決めて欲しいと念願(ねんがん)しています。それは、私一人の願いではないはずです。

しかし、誰かを頼りにしていたら、もう間に合わないところまで危機が迫っていることを強く感じました。それで、この本を出すことにしました。どうか、いろいろな人に読んで貰(もら)いたいと思います。

この本を読んだら、今まで分からなかった疑問(ぎもん)が解け、国民が進む大道(だいどう)が見つかり、世の中が正される。日本国の使命に向かって、国民が誇りと品格(ひんかく)を取り戻せるようになる。そう願って、心を込めて書きました。

ただし、その願いを一冊の本にまとめることは簡単ではありません。本書がそのための入門書となって、信念を持って奮闘する立派な日本人が、一人でも多く育つことを希望しています。もっと詳しく学びたい人は、自分で調べて下さるようお願いします。

昭和2年1月25日    著者(林平馬)