No.36 苦しい中、天皇はひたすら国民を心配された

天皇のご神徳は、天皇が詠まれた歌である御製(ぎょせい)に示されています。

後柏原天皇(第104代)御製

いかにせば日月(じつげつ)と同じ心にて
雲の上(うえ)より世を照らさなむ(ん)

(意味)どうしたら太陽や月と同じ心になって、
雲の上から世の中全体を照らすことができるだろうか。

明治天皇(第122代)御製

世の中をおもふ(う)たびにも思ふ(う)かな
 わがあやまちのありやいかにと

(意味)世の中を思うとき、いつも思ってしまうのは、自分に間違いがなかったかどうかという反省である。

そして、著者の林平馬の歌です。

天皇(すめらぎ)が太陽(おおひ)の如(ごと)く輝きて
 あまねく照(てら)す国ぞたふ(とう)とし

(意味)天皇が太陽のように輝いて、わけへだてなく照らされる国の尊さよ。

日本の国は、天皇による「太陽のような明徳」で統治されてきた、本当に尊い国です。武士が実権を握った徳川時代でも、各藩は天皇のご神徳をお手本に、徳の政治を実行しました。

米沢藩(今の山形県)の改革を行った上杉鷹山(うえすぎようざん)は、綿の服を着て倹約の模範(もはん)を示しました。また、江戸幕府の改革を行った松平定信(まつだいらさだのぶ)は、礼装である紋服(もんぷく)を着たまま、田の中に立って豊作を祈りました。

これらは、ご神徳に学び、天皇の大御心を自分の心として、国民のための政治を行った例です。ご神徳は、家庭にも、市町村の政治にも、国家の政治にも、また会社や団体の運営にも、お手本となる基本精神です。

政治家が、仁徳を忘れ、権力で治めようとすれば、世の中はますます乱れていきます。国家は危うくなり、政治は失敗します。それは、歴史が証明しております。

政治家の中には「政治は力だ」と言う人がいますが、そういう考え方は危険です。名誉や利益を求める権力闘争に血迷ってはいけません。部下に冷淡な上司も気を付けて下さい。猛反省して、へりくだる気持ちを取り戻して欲しいのです。

林英臣の補足:後柏原天皇の時代は、応仁の乱によって世の中が乱れ、天皇の権威(けんい)が地に落ちていました。朝廷もお金がなくなり、公家たちは地方に逃げてしまい、必要な儀式ができなくなりました。とても苦しい中にも関わらず、天皇は戦乱に苦しむ国民を、ひたすら心配されました。
御製は、そのお気持ちを詠まれたものです。

「政は正なり」。これは儒学を教えた孔子の言葉です。政治は力ではなく、どこまでも一本道を真っ直ぐ進む正義でなくてはなりません。(続く)