No.42 経済には、もっと深い意味がある

また、明治天皇は、日常生活にお用いになる道具や家具を、破れたら繕(つくろ)われ、壊れたら修理され、最後まで大切に使われました。
毎日お詠みになる御製(ぎょせい、天皇陛下のお歌のことで、明治天皇の御製は9万3千首を超えた)も、不要になった封筒を開いてその裏側に書かれ、新しい紙をお用いになるようなことは一度もなかったそうです。

そういう数々の聖徳(せいとく、非常に優れた最高の徳)を知りますと、我々の努力不足による不徳(ふとく、徳の欠けたようす)が、心から恥ずかしくなります。

男性と女性を比べれば、女性のほうがオシャレ好きであり、衣服を多く持っています。もしもその枚数ばかり誇っていて、服をほとんど使わないとしたら、世の中の大切な物資(ぶっし)を浪費(ろうひ、ムダにすること)していることになります。もちろん男性にも、よくあることです。

物資の浪費、それは物格を損ねるという罪悪(ざいあく)です。小さなことのように思うかもしれませんが、こういう物を生かせない精神が積み重なって、やがて大きな亡国心(国を亡ぼす心)となるのです。

京都の知恩院門主(ちおんいんもんしゅ)で、東京芝の増上寺法主(ぞうじょうじほっす)であった行誡上人(ぎょうかいしょうにん、明治20年没)が、次の歌を詠んでいます。

いたづ(ず)らに枕をともすともし火も 思へ(え)ば人の油なりけり

(意味)夜、むなしく枕元を照らしている灯火(ともしび)も、思えば人間が苦労して造った油なのだ。

「経済」という言葉があります。経済は経世済民(けいせいさいみん)の略で、経世は世代を貫くタテイト、済民は人々を救うことです。経済とは、何世代にも渡って、国民を養い守っていくことなのです。通常(つうじょう)経済的というと、安上がりで節約(せつやく)になるといった意味に受け取られがちですが、本当はもっと深い意味があるのです。

あるいは、経済を節約の意味に受け止めるとするならば、一つの草にも、一つの木にも、そこに天の意志が込められていることを思い、一切(いっさい)を生かし切ろうとする精神ということになります。草も木も物も、それらを人間のために用いるときに、一物もムダにすることなく、その価値を発揮(はっき)させてくのが経済です。

こう考えれば、経済と人の道を教える道徳は、決して相反するものではなく、両者の意味の一致が見えてきます。さらに経済は、人の心を高めていく宗教でもあると言えましょう。

太陽を見て下さい。すべての人と物を生かし、何一つ否定(ひてい、拒否して認めないこと)しません。一人(いちにん)も一物(一つの物)も捨てないのです。

明治天皇が、国民一人ひとりに志を遂(と)げさせ、その心を飽きさせたり、怠けさせたりしないようにと仰(おお)せられましたのは、まさに太陽主義の考え方であったのです。人をまとめたり、人の上に立つ人は、それぞれこの大御心(天皇陛下の御心)に学び、それを自分の心とすることが大切です。
そうして、日本人であるという自覚から出発し、さらに広大な世界に向かって、太陽の心を行(ゆ)き渡らせていくのが大日本主義なのです。(続く)