No.83 神風が吹くことを、あてにしていてはいけない

我が国体(こくたい、国柄)と我が民族の優秀さをフランス人が認め、日本と日本人の使命を誉(ほ)め称(たた)えてくれたという話をしました。

でも、一言注意しておきます。日本国民は、決して思い上がってはいけません。もしものときは、神風(かみかぜ)が吹いて日本国を助けてくれると思っている人がいませんか。日本を助けるための神風(かみかぜ)が、いつでも吹くと思ってはなりません。神々の助けが必ずあるとして、他をあてにしているようではいけないのです。

はたして今のような国民の状態に対して、本当に天の助けが来るでしょうか。この腐敗堕落(ふはいだらく、腐って落ち込んだようす)しきった国民に神風が吹いてくれるとは、とても考えられません。

それどころか、恐ろしい天の咎(とが)めが下されるのではないかと心配でなりません。数年前に起きた関東大震災(大正12年、西暦1923年)も、日本人に対する一つの警告ではなかったかと恐れます。

孝明天皇(第121代)御製

諸人(もろびと)の心の限りつくしてし
後(のち)にぞ頼め伊勢の神風

(意味)まず人々が、あらん限りの心を尽くすことです。伊勢の神々が吹かせる風を頼りにするのは、その後(あと)です。

林英臣の補足:かつて元(げん、蒙古族が建てた王朝)が二度に渡って日本に襲来(しゅうらい)したことがありました。文永11年(西暦1274年)の文永の役(ぶんえいのえき)と、弘安4年(西暦1281年)の弘安の役(こうあんのえき)です。

元は大軍で攻めてきましたが、我が国は九州武士団の奮戦(ふんせん)と暴風雨によって撃退しました。このときから日本人は、国家に危機が迫ったときは、必ず神風が吹くと信ずるようになりました。でも、それをあてにして、国を守るための努力を忘れてしまうようでは困ります。

孝明天皇の時代は、イギリス・フランス・ロシア・アメリカなどの列強が、武力によって日本に開国を迫る国難のときでした。そこで天皇は、神風に頼ろうとする国民に向かって、戒めを込めてこの御製を詠(よ)まれました。

なお、「伊勢」にかかる前置きの枕詞(まくらことば)が「神風や」ですが、ここでは伊勢=日本の神々が吹かせる風という意味で「伊勢の神風」と詠まれたのでしょう。(続く)