No.91 没我によって大我となる

こうして自己は、空間的にも時間的にも、限りなく広がった中の一点に立っている存在であるということが分かります。自己は無限性(むげんせい、限り無い性質)を持っているのです。

従って、この無限性に生きる自分を確立するのが、本当の自己実現となります。生き方としては、自分に与えられた資質(ししつ)や能力を、職業や社会貢献を通して発揮(はっき)するのが一番です。無限の自己が実現されていくよう、いっそう仕事や活動に真剣になるべきです。

ここまで読んで下さった方には、先祖とも子孫とも家族とも友人とも切り離してしまった、単身(たんしん)一個の自分を世間に認めさせようとしても、少しも自己実現にはならないということが、もう明白(めいはく)にお分かりになったことでしょう。

自己実現は、目立ちたがり屋や出たがり屋となることよりも、むしろ没我(ぼつが、自分を無にすること)と一致するということを悟らねばなりません。没我によって大我となるのですから。

林英臣の補足:大和言葉では時間をトキ、空間をソラといいます。トキのトは止まる・留まるのト、キはきつい、厳しいのキで、トキは強く刻まれたものを意味します。それから、ソラのソは添う・反るなどのソ、ラは「流音」で変化活動を表し、ソラは張り伸びた活動と、その活動が起こる場を示しています。

これらトキとソラを、同時に表す一音がマです。間取り・間合いといえば空間、間に合う・束(つか)の間といえば時間のこととなります。

マ音は、時空が同一であることを意味する音であり、息(いき)をしているこの時・この場がイマ(今、息する間)なのです。

そして、マ(時空)の広がりがアマ(天)となります。アマのアは、開(あ)く・明るいのアです。こうしてイマがアマに広がり、そこに人生を重ねることで自己が実現されていくのです。

それから大和言葉では、過去をマヘ(前)、未来をノチ(後)といいます。マヘのマはイマ(今)のマ、ヘは海辺(うみべ)・山辺(やまのべ)・舳先(へさき)・縁(へり)などのヘで、マヘは現在から見て過ぎ去った先(さき)のことです。ノチは何かというと、ノは「~の」という接続、チは千(ち)・チスヂ(血筋)・ツチ(土)のチで、ノチは現在から接続・継続していく先を示しています。

これらマヘとノチをつなぐと共に、過去も将来もすべて含んだ時点がイマです。すべてがイマであり、大宇宙にはイマが存在しているのみ。常にイマが中心、これをナカイマ(中今)といいます。

自己実現によって自分の時空を拡大し、イマを中心に過去も将来も?み込んで生きていく。そこに、一瞬にすべてを懸けられる日本人の生き様(ざま)があります。(続く)