No.96 帝国と帝国主義の違い

4 帝国主義と大日本主義

最高の学校を卒業した有為(ゆうい、有能で役に立つこと)の青年が、ある日私を訪ねてきて「先生、日本の帝国主義はいけませんね」と言いました。これには本当に驚かされたので、私から逆に「日本に帝国主義があるのですか」と質問してみました。青年は「日本は帝国主義の国です。帝国主義のよくないことは、世界の常識ではありませんか」と、いかにも物知り顔で答えました。

憐(あわ)れにも、この青年は「帝国」と「帝国主義」の違いを知らないようです。私はよく説明して、その誤りを正してやりましたが、おそらく現在の日本青年の意識は、皆このように間違っているのではないかと思います。

確かに日本は、中心がしっかりしている帝国です。神代以来、代々の天皇が治めている世界一の帝国です。

しかし、帝国主義の国ではありません。帝国主義を否定するということと、帝国を否定するということは、全然違うということを知らねばなりません。

では、そもそも帝国主義とは何でしょうか。帝国主義という名称は、英国に起こりました。英国は、世界のいたる所に領土や植民地を獲得して略奪を行いました。その強大な権力によって、国家を挙げて世界帝国を建設したのであり、その侵略主義が帝国主義なのです。

その意味からすれば、拡張を目指すドイツの世界政策やロシアの汎露主義も、アメリカが掲げる南北アメリカ大陸に勢力を確立しようというモンロー主義も、フランスの好戦主義も、どれも帝国主義であると言えます。

重ねて述べますが、帝国主義とは侵略主義や併呑(へいどん、一つに合わせて?み込むこと)主義を指して呼ぶ言葉です。軍事力や経済力にものをいわせて、他国を圧倒するやり方が帝国主義です。

従って、政治体制が帝国の君主制なのか、あるいは共和国なのかは関係ありません。自国を膨張させるために強圧的な手段をとっているかどうかが、帝国主義かどうかを判断する決め手なのです。(続く)