No.97 帝国主義は、戦争の後の講和で消滅させられるようなものではない

帝国と帝国主義の違いが分からないのは日本人ばかりではありません。支那人(チャイナの人)も間違っています。広東(かんとん)の国民党軍は「帝国主義の撲滅のために立て」と盛んに宣伝していますが、その一方でロシアの大帝国主義とは協力しています。ロシアは革命によって共和国になったから、もう帝国主義ではないとでも思っているのでしょうか。それとも、分かっていながらロシアを利用しようとしているのでしょうか。いずれにせよ、真の帝国に住む日本人まで迷うようなことがあってはなりません。

もう少し帝国主義について説明しておきましょう。アメリカ大統領のウイルソン(1856~1924)は「世界大戦は帝国主義の衝突である。だから、これを絶滅させて平和な世界を建設しなければならない」と考えて、パリ講和会議に臨みました。講和会議には世界各国の首脳が集まり、新しい世界の構築について討議されました。国際連盟の設立案も、その中に含まれています。ウイルソンの考えは、本当にその通りです。

しかし、帝国主義の害毒に懲りて講和会議が開かれ、その結果、もう帝国主義の時代は終わったのだと考える者がいるとすれば、それはお気の毒と言わんばかりの浅薄な思考でしょう。

第一次世界大戦の参戦国がウイルソンの提言を歓迎した理由は、帝国主義の間違いを悔い改めたからではありません。戦争に疲れて窮したときの神頼みにすぎず、一時の方便だったのです。その証拠に、むしろ帝国主義は、戦前よりもいっそう盛んになっています。さらに徹底的であり、露骨に、巧妙に行われている有り様です。はっきり言います。帝国主義は、戦争の後の講和で消滅させられるようなものでは全然ありません。

フランスはどうでしょうか。もともとドイツ語文化圏に属していたアルザス=ロレーヌ地方を自国に編入し、ザール川の流域とライン川の左岸を占領しました。また、ベルギーと結んでポーランドを保護国同様の状態で独立させ、ドイツに対して人道に反するほど過重な賠償金を課しました。オーストリアとハンガリーの二国には脅威を与えて勢力下に置き、全欧州の覇者たらんとしたのです。さらにモロッコを奪ってアフリカに地歩を固め、極めて露骨に遺憾なく帝国主義を発揮していることは、世界の大勢を冷静に見ている人からすれば等しく肯定される事実のはずです。(続く)