その14 宇宙は、変化・バランス・安定で成り立っている

ヨガ修道場で学んだ哲学について少し述べておきます。沖先生は「宇宙は、変化・バランス・安定で成り立っている」と教えて下さいました。

あらゆる物は活動し変化している。その動きはバランス維持の方向へ働く。その結果、物事は安定に至る。が、そこで終わるのではなく、さらに次の変化が起こる。それに対して、新たなバランスを取るための動きが生じて安定へ向かうと。宇宙は、その繰り返しで進化しているという説明でした。

まさに病状がそうです。健康体に病状の発生という変化が起こると、体は痛みによって警告を発し、発熱で細菌やウイルスを退治し、吐瀉(としゃ)・排泄(はいせつ)によって異物を追い出そうとします。倦怠感は、横になっての休息を促します。それらは、基本的にバランス回復のために起こっている症状です。やがて治癒すれば、体は安定を取り戻すことになります。(但し、病状というものは体力を消耗させ、長引けば免疫力も低下させますので、ただ放っておけばいいというわけではありません。症状を緩和させるための適切な処置を施しつつ、バランス回復へ向かって自然治癒力を高めていく必要があります)。

それから、沖先生は「綜合的であることの重要性」を説いておられました。あるとき、次のような問い掛けを頂きました。「林、武道はいろいろやれ。昔の武士は武術を綜合的に修行したが、何で綜合的に鍛錬することが大切か分かるか?」。

私は「体を偏って使わないためですね」と答えました。沖先生は頷きながら「そうだ、スポーツ選手には怪我と病気が多い。それは偏った体の使い方をしているからだ。武道なら、柔道は引く力、剣道は伸ばす力を鍛える。また、空手道は体を引き締める運動、弓道は胸を広げる運動になる。それぞれの特徴を考慮しつつ、武道の稽古がそのままヨガの行となるよう幅広く良くやりなさい」とご指導下さいました。この教えもあって、筆者は武道を綜合的に稽古するようになった次第です。

なお、綜合性というのは、必要な事柄を偏り無く取り入れることであって、断片的な考え方を集め、その場しのぎのやり方を細切れに行うこととは全然違います。あれこれ摘(つま)み食いをし、中途半端な取り組みを繰り返しているような、部分を寄せ集めただけの行為とは次元が違うのです。

ヨガ修道場の綜合性の実践として「全体食」がありました。根の野菜なら葉も、葉の野菜なら根も食べる。芋なら皮も、魚なら骨まで丸ごと食べる、などという全体を頂く方法です。これも、身体のバランス力を高めるための方法でした。

ヨガには、結ぶ・繋(つな)ぐという意味があります。心と体、自己と宇宙、見えるものと見えないもの、陰と陽、中心と全体など、いろいろなものを結び合わせ繋ぐことで、綜合的で一体となった世界を創造していくのがヨガの目的です。(続く)