その21 表層の原点、深層の原点、そして新規の原点

そして、原点は何層かあるのが普通です。先に述べたように、「自分の原点はこれだ」とすんなり答えられたからといって、それで原点を確実に掴めたかというと、決してそうではありません。原点は数層あり、表層だけ見えたからといって安心するわけにはいかないのです。

原点は、すくなくとも3つあります。第一は「表層の原点」、第二は「深層の原点」、もう一つは「新規の原点」です。「表層の原点」は、いま取り組んでいる仕事や活動の、直接の原点のことです。その、もっと深いところにあるのが「深層の原点」です。さらに、学習と体験、出会い等によって新たに加えられたのが「新規の原点」です。

例えば、ある政治家の原点が、子供の頃に参加した国会見学にあるとします。見学のときに案内してくれた議員の説明に感動し、大人になったら政治家になろうと決意し、そして本当に選挙に出て当選したと。

しかし、国会見学に参加した子供は、その人以外にも沢山いたはずです。その中で一人だけ政治家になったのはなぜかです。どうして自分だけ国会見学に反応したのかを、よく探究してみる必要があります。

そうして振り返ってみたら、もっと幼い頃に祖父母から英雄・偉人の話を聞かされていたり、先祖や親戚に政治家がいて、その影響を受けていたりしていることが分かり、それらが「深層の原点」に眠っていたということに気付くわけです。

あるいは、教師になった人の原点が、学生時代の読書好きにあったとしましょう。本を読むことの楽しさによって学校の先生になったと。

でも、読書好きなら誰でも教師を目指すかというと、全然そうではありません。出版社に勤めてもいいし、図書館司書になって図書館で働いてもいいのに、なぜ教師になったのかです。

そこで、もっと深い原点を探ってみたところ、子供の頃に弟や妹たちの勉強を見ていたことがあり、人に何かを教えることの面白さを感じる経験になっていたことが浮かび上がってきました。この場合、その経験が教師になるための「深層の原点」になっていたということになるでしょう。

こうして原点は、表層の下に深層が存在しております。今の仕事や活動は、そもそもなぜ始めたのか。そのきっかけは何だったか。そのまた元に何があったのか。そうやって掘り下げていけば、表層と深層の両方が分かるはずです。

そして、原点が定まれば、コマの中心に軸がビシッと通っているような、決してぶれることのない生成発展の人生が開かれるに違いありません。

さらに、学習と体験、出会い等から「新規の原点」が起こります。議員になってから学び直し、政治家として必要な哲学思想を体得し、優れた理念政策から刺激を受け、いい同志に恵まれたならば、それらによって新たな「種」が魂に宿されることになります。それが「新規の原点」となるわけです。(続く)