その24 能力が平凡でも、志に集中すれば大きな成果を上げられる

中国思想の大家も、志の大切さを教えていました。孟子は「志は氣の帥」と述べ、志があれば身中から氣が、どんどん引き起こされるということを教えました。また、王陽明は「志立たざれば天下に成るべきの事なし」と説いて、あらゆる成功は立志の結果であるということを明らかにしました。義を尊ぶ孟子の思想は、とても情熱的であり、知行合一を説く陽明学は、東洋思想の中で一番の行動哲学です。

高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文ら多くの志士を育てた吉田松陰先生は、教育への志を次のように語っていました。師匠が弟子育成に本氣の熱意を持っていたからこそ、現実に素晴らしい志士たちが誕生したのです。

「天下は動いているから、今は治まっていても、後になって乱れることがある。今は衰えていても、後になって盛んになることもある。治から乱へ、衰から盛へ移るときは、英雄豪傑が活躍するときだ。

残念にも自分はそのときに巡り合えず、活躍する地位に就けなかったとしても悲しむことはない。これから先、私が教育した者の中から、きっと英雄や豪傑が出てくるだろう。

それが私の志だ。君子の楽しみと言えるではないか」。『講孟剳記』下 吉田松陰 林訳

志は「士=之」と「心」が合わさった会意文字です。之は「ゆく」であり、心が一つの方向に向かうことが「こころざし」なのです。志を立てると、自分の持っている力が統一され、周囲の応援も貰えるようになります。人は、何をしたいのかが不明な人よりも、明確な志を立てている人のほうを断然応援したくなるものです。

そして、志には虫眼鏡が光を集中させるときのような働きがあります。冬の弱い太陽光であっても、虫眼鏡で集中させて焦点を定めれば、黒い紙を燃やすことが出来ます。

同様に、たとえ能力が平凡であったとしても、立志によって集中力を発揮すれば、必ず大きな成果を上げることが可能になります。反対に、どんな多彩な能力を持っていたとしても、やることが摘(つま)み食いのようにバラバラでは、全てが中途半端で終わってしまいます。そういう器用貧乏な人生とならないためにも、本氣の立志が必要なのです。(続く)