その26 言ったことを本当にやる人かどうかを見分けるポイント

信用出来る人かどうか、言い換えれば、言ったことを本当にやる人かどうかを見分けるポイントについて述べましょう。その第一は、「今出来る事をやる人かどうか」です。どんな大きな事業も、小さな事の積み重ねによって成り立っています。それは、今出来る事を疎かにしない姿勢によって進められていきます。

将来、フランスに渡って料理を学び、日本に帰ったらシェフになりたいという人がいたとします。本格的な学びは渡仏してからになりますが、日本にいる間にやれる事や、やっておくべき事があります。渡航や滞在費用の貯金、フランス語の勉強、現地の情報収集、国内のフランス料理店での試食など、いろいろ出来る事があるものです。

あるいは、エベレストに登りたいなら、入山費用など登山に必要となる資金の獲得、登山予定のパーティの情報収集、体力や呼吸力の増強、国内の高山での鍛錬など、今からやっておくべき事が沢山あります。

本氣でやろうとしている人なら、居ても立ってもいられないのが当たり前で、言われなくても今出来る何かに取り組んでいるはずです。今出来る事とは、まさに「そうしないではいられない事」であり、それを真面目に実践しているかどうかで、信用に足る人かどうかの判断が概ね付くものです。

次に筆者が注視するポイントは「小さい約束を守れる人かどうか」です。友人の結婚披露宴や、大事な人の誕生祝賀会への参加など、忘れてならない大きな約束なら、誰でもよく覚えています。でも「その資料なら今度持っていくね」とか「その件は、誰それ君にも伝えておくね」といった、特にメモするわけでもない小さな約束の場合は、とかく守られないことが多いのではないでしょうか。

そんな中で、日時や期限を含め、約束や決められた事をきちんと守れる人がいます。そういう人こそ、本当に信用出来る人であると思います。

もしも10人で行う会議に10分遅れた人がいて、そのために全員が待たされたとすれば、10人×10分で100分間の損失となります。遅れた人の10分間だけでは済まないのです。合わせて、必要な資料を作成してこなかったために、その議題が次回まで先延ばしになったとすれば、もはや膨大な時間の喪失となります。小さい約束の重要性を理解している人、時間の大切さを分かっている人ならば、そういうことは決して起こさないでしょう。

そして、小さい約束を守る人のところに、大きな仕事がやってきます。世間は、誰が信用出来る人なのかをよく見ています。小さい約束を守れないような人に、一体どこの誰が大きな仕事を任せてくれるでしょうか。

なお、この小さい約束を守るということと、小さな事に拘(こだわ)っていてはいけないということを、混同している人がときどきいます。小さい約束が積み重なって大きな事業に至るのですから、それは全然小さな事ではありません。小さな事に拘っているというのは、部分に囚われていたり、表面的なことに振り回されていたり、価値の無いことに心を奪われたりしていることなのです。小さい約束を守ることと、小さな事に拘らないことの違いを、よく弁(わきま)えておいて下さい。

もう一つの信用のポイントは「成功するまで続ける人かどうか」です。何事も、始めてから成果が出てきて成功するまで時間がかかります。最初のうちは、努力に対して反応が乏しいのが普通です。しかし、ある段階を超えると、努力と成果がつり合ってまいります。なかなかそこまで我慢できる人が少なく、知恵と工夫も貧弱であるために、世の中には上手くいかない事が多いのでしょう。

とにかく、小さな事を疎かにせず、成功するまで徹底継続する人のもとに信用が築かれてまいります。それには、深い知恵や優れた工夫、つまり英知が必要となります。焦ることのない、落ち着いた根気も欲しいです。そのあたりから、継続力の有無を見抜きましょう。

こうして、原点である「種」から大局となる「根」が張られ、地上には芽が出て本氣の「幹」が年輪成長し、徹底して「枝葉」が繁茂してまいります。そこから、やがて花が咲き実を結ぶことになるというわけです。(続く)