その53 日本語のルーツは日本

続いて、日本語の特徴について述べます。第一の特徴は「日本語は極めて古い言語である」というところにあります。日本の周辺に“親戚関係”となる言語が見当たらず、どこにルーツがあるのか不明なため、言語の系統を説明することが出来ないのです。そういう言語を孤立語と言います。

それでも学者の研究によって、北方説と南方説が唱えられました。北方説は、日本語はウラルアルタイ語系に属すという見解です。その語系の中にフィンランド語、ハンガリー語、トルコ語、モンゴル語、朝鮮語などが含まれているというのですから広範です。共通点は文法にあり、文の末尾に述語がくることや、末尾に疑問詞を付ければ疑問文になることなどが北方系の要素です。

それならば日本語は北方系なのかというと、そういう結論には至りません。一つ一つの言葉を調べた場合、南方系の言語と共通点が見つかるからです。手・顔・目・口などの基本的な言葉は、南方系の言語に対応語が存在すると。

結局、縄文時代の日本列島で形成された言語(原日本語)に、北方系や南方系の要素が加わり、やがて大陸から漢字が入ってきて、今日の日本語が形成されたということになります。「日本語のルーツは日本」というわけです。

◇音読みと訓読みがあるのが、日本語の特徴の第二◇

日本語の特徴の第二は、音読みと訓読みの存在です。音読みは、中国から入ってきた漢字そのものの発音であり、訓読みは、原日本語である大和言葉で漢字を読んだ際の発音です。

漢字を受け入れる以前から話されていた日本固有の大和言葉があり、それを生かして、ほぼ全ての漢字を訓読みしてしまったのです。これが英語ならば、英単語一つ一つを日本語読み(=訓読み)したということになります。英単語の意味を日本語訳したというのではなく、英単語を並べることで日本語を表してしまうという“離れ業”をやってのけたのです。

しかし、いきなり音訓が整ったわけではありません。漢字は最初、“発音記号”のように使われました。漢字一文字で大和言葉の一音を表すという、漢字を表音文字として用いるやり方です。

例えば「見事な成長力の働き」をウマシアシカビヒコヂの神といいますが、この古事記冒頭に登場するウマシアシカビヒコヂを、古事記原文では漢字10文字を使って「宇摩志阿斯訶備比古遲」と表記しております。

やがて漢字をどんどん訓読みしていき、音訓交えることで日本語は言語として進化しました。

例えば、古代の人たちは、出ていて整っているものをハナと呼んでいました。野に咲く花も、顔の中央にある鼻も、端(はな)からの端も、華(はな)やかの華も、全部ハナだったのです。そのままでは、ハナと聞いても一体何のハナなのか分かりません。そこへ花・鼻・端・華という漢字が入ってきて訓読みすることで、どのハナを指しているのか分かるようになりました。

あるいは、出ていてつながる(つなげる)ものをハシと呼んでいたところへ、橋・箸・柱(はしら)・梯子(はしご)などの漢字が入ってきて訓読みされ、それによって言葉の意味が分類整理されたのです。(続く)