その55 山のように多く集まった言葉が大和言葉

「やまとことば(大和言葉)」という言葉そのものの音義(音の意味)について述べておきます。やまとことばの「やまと」を山止、即ち「山(やま)」+「止まる」に解釈すれば、山のように止まるという意味になります。山のように多く集まった言葉が、やまとことばであるという理解です。

もう一つは、「八(や)」+「まとまる」です。八雲(やくも)や八重垣(やえがき)、八岐大蛇(やまたのおろち)など、八(や)には沢山という意味があります。それがまとまるのですから、多くの言葉が整っている様子を表していることになります。

元来「大和」は、奈良盆地周辺の地名でしたが、後に日本国の別名となりました。だから、大和言葉は「日本の言葉」という意味であり、日本語の語彙(ごい)が豊富なようすを表した言葉なのです。

ところで、固有の言語である大和言葉と、外来語である漢語の関係は英語にもあります。英語の大和言葉はゲルマン語、漢語はフランス語(ラテン系語)に当たるのだそうです。例えば、豚のピッグ、牛のオックス、羊のシープは前者で、それが食肉となったときのポーク、ビーフ、マトンは後者とのこと。

1066年、北フランスのノルマンディー領主ウイリアム公がイギリスに侵入し、ノルマン朝を起こしてイングランドを支配するようになります。先住者であるイングランド人は被支配者、フランスから移ったノルマン人たちは支配者となったのです。

そして、被支配者は家畜を育て、それを食べるのが支配者という関係が生じます。その結果、被支配者の言語であるゲルマン語でピッグ、オックス、シープなどの家畜を表し、支配者が使うフランス由来の言葉でポーク、ビーフ、マトンなど、食卓に上がる食肉を表すようになりました。

◇日本語は、48音の一音一音がキチンと発音される◇

日本語の特徴の第三は、一音一音が明瞭であることです。48音の一音一音が、キチンと発音され、その一つ一つに発声上の特徴と、それに基づく意味があります(通常50音と言いますが、正確には48音です。「やいゆえよ」の「い」と「え」、さらに「わゐうゑを」の「う」が、「あいうえお」の「い」「う」「え」と重なりますので3音減ります。そこに「ん」音を加えることで、全部で48音となります)。

さらに、母音がはっきり発音されます。子音のカ行音であれば、かぁ・きぃ・くぅ・けぇ・こぉ、サ行音であれば、さぁ・しぃ・すぅ・せぇ・そぉ、となって母音の裏打ちがしっかりしております。

そうして、日本語は仮名一文字が一音節という、世界に希な言語となりました。平仮名も片仮名も表音文字であり、その一文字一文字が一音節なのです。

音節とは何かというと、母音1個を中心とする「ひとまとまりの音」のことです。「あいうえお」の母音はもとより、(母音に裏打ちされた)カ行~ワ行の各音に至るまで、仮名一文字が一音節となっています。

日本語には、仮名一文字が一音節であるばかりか、一音がそのまま単語になっている例が沢山あります。井(い)、江(え)、木(き)、目(め)、田(た)、日(ひ)などがそうです。これらは、すべて大和言葉であり、一音で単語となって、それぞれ意味を持っているのです。

この一音一音が明瞭であるという言語の特徴から、音の数を揃えることで詩を作る俳句や短歌が生まれました。俳句なら五七五、短歌なら五七五七七で創作します。

また、子供たちのジャンケン遊びで、グーならグリコで3歩、チョキならチョコレート(チヨコレイト)で6歩、パーならパイナップル(パイナツプル)で6歩進むのも、音の数を元にしております。

ところが実際は、グリコはgli・coで母音が2個(2音節)、チョコレートはchoc・o・lateで母音が3個(3音節)、パイナップルはpine・appleで母音が2個(2音節)なのです。従って、それぞれ3歩・6歩・6歩ではなく、2歩・3歩・2歩しか進めないのが本当です。

それから、日本語では3音節で発音してしまうバンド(band)は母音が1個だから1音節ですし、5音節に思えるストライクはaiの二重母音で1母音になっており、母音はそれのみですから1音節に過ぎません。

とにかく、この音節が言葉の最小単位です。音節が組み合わさりますと、は+な=はな、あ+ま=あま、というように単語になります。さらに、単語がつながって文になるというわけです。(続く)