その56 あ音は開く、い音は命、う音は閉じる、え音は伸長、お音は偉大

48音の一音一音が、キチンと発音されているのが日本語であり、その一つ一つに発声上の特徴と、それに基づく意味があると述べました。分かり易く言えば、発声の仕方がそのまま意味を生むという「自然発声音」で成り立っているのが日本語なのです。

日本語の5母音(あいうえお)を例に、自然発声音を説明しましょう。母音は、声帯が震えて出た声(有声音)が、口の中で何らかの障害や摩擦を受けないで発声された音のことです。子音に対して母体の役割を果たしているので母音と呼ばれています。

「あ」は口を大きく開け、呼気(吐く息)を最も邪魔しないで出す音です。それで、明るい、開く、明ける、新たなど、開く意味を持っています。

「い」は口角を強く横に引き、口腔の前の方で調音する音です。それで、活き活き、生きる、行く、命(いのち)など、前に向かう積極性と生命力を表す音となっています。

「う」は息を奥に溜め込み、口を最も閉じ、出来るだけ息を外へ出さないようにしつつ発声する音です。それで、うた(歌・詩)、内(うち)、俯(うつむ)く、唸(うな)る、うむ(生・産)、埋めるなど、閉じる意味や、内部に力が働く様子を表しています。

「え」は他の母音から等距離の位置にあり、いかなる母音にも変わりうるニュートラルな音です。それで、兄(え)、江(え)、枝(えだ)など、分岐(ぶんき)や分かれての伸長といった意味があります。次に出す言葉を選ぶときに「え~」「え~とですね」などと言うのは、他の母音に移り易いからでしょう。

「お」は口腔内を丸くし、呼気を大きく包み込むように発生する音です。それで、大きい、奥、押す、重い、主(おも)など、偉大で重要な意味が現れます。

5母音は「あ→え→い→お→う」の順で、口が大きく開いた状態からから閉じた状態に変わり、「う→お→あ→え→い」の順で、口の奥から前へ調音点が移ります。また、「あ→え→い」の順で口角が横に引かれ、「あ→お→う」の順で口が閉じていきます。(続く)