その59 日本語の成り立ちの古さの証明

以上の通り、一音一音がキチンと発声されるということと、母音が明瞭であるということの、2つの特徴を強く残しているのが日本語です。

言語というものは、いきなり複雑な構造を持つということは考え難く、まず一音一音の発声から始まります。しかし、一音ずつでは表現が限定されます。そこで音を組み合わせて単語をつくり、形容詞や動詞が出来て文法が形成され、言語として組み立てられてまいります。

一音一音の意味がしっかり残っているということも、発声の母体となる母音が明瞭であるということも、日本語の成り立ちの古さの証明に他なりません。これらの事実によって、世界の言語の中で、最も古い部類に属しているのが日本語であるということが分かるのではないでしょうか。

では、日本語だけが特別な言語かというと、決してそうではないと思います。一音一音がキチンと発声され、母音が明瞭であるということは、おそらく古い言語に共通した要素だったに違いありません。それが時代と共に言語として複雑化し、征服したり征服されたりという歴史的な変動を重ねながら他の言語とも混ざり合い、変化していきながら現在使われている言語に至ったものと思われます。

日本語が特別であると言えるならば、古い形式が最もよく残った点にあるでしょう。人類の根本言語と呼ぶに相応しい特徴を、今に至るまで伝えているのが日本語なのだと。

ところで、日本人の言語脳の研究をされた、角田(つのだ)忠信氏の研究をご存じでしょうか。角田氏は、もともと難聴の治療を研究していた医者です。難聴の原因には、聴覚器に問題がある場合と、器質的な問題は無いものの、機能的に上手く聞こえないという場合があります。それを調べるうちに、脳による言語の処理様式についての研究に辿り着かれました。その結果、驚くべき事実が判明したのです。(続く)