その62 大和言葉こそ、日本思想を解くカギ

そもそも言葉は思想に他なりません。ある見方や感じ方、考え方や行い方があり、それを表現するために言葉が形成されます。固有の言葉は、それを話す民族・国民にとって大切な思想そのものと言えます。即ち、ある言葉が存在するということは、その言葉によって伝えたい思想があるということです。

さて、我が国固有の思想として、第一に挙げたいのが「中心論」です。『古事記』神話の、冒頭に登場する神の名は天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)です。「あま」は宇宙、「みなか」は本源的な中心、「ぬし」は司ることを意味します。天之御中主神は大宇宙の根源神であり、この神が最初に現れるところに、日本の中心思想がよく示されております。

それから、中心のもとに結束することの大切さを教えている「組織論」も日本思想の特徴です。それを表す大和言葉が「くみ」です。中心と部分が結ばれる方向が「たて」、部分同士がつながる方向が「よこ」となり、中心のもとに「たて」「よこ」が組み組まれ、全体が一つの有機体として成立することになります。

そうして、縦横に組まれた有機的な組織が起こす生成力を「むすひ」と言い、「むすひ」の造化の働きが最もよく現れる組織を「いのち」と呼びます。「いのち」は息の内の略であり、「いき」は吸うことと吐くこと、つまり陰(吸う・入る)と陽(吐く・出る)の循環です。

さらに「いのち」は、「をす(男)」と「めす(女)」に分かれます。「をす」は「種」を植えること、「めす」は「畑」となって種を受け入れるところに役割があります。この結合する両者が「めをと」、「めをと」による世代の継承が「ちすぢ」です。

これら「あま」「みなか」「くみ」「むすひ」「いのち」「めをと」「ちすぢ」などが、日本思想を代表する大和言葉です。大和言葉こそ、日本思想を解くカギと言えます。(続く)