その74 やるかやらないか以前に、意識しておくべきこと

「成功する」は、『葉隠』の原文では「図に当たる」です。「図」は意図や図星の図で、「図に当たる」は思った通りになるという意味です。

やる以上、認められたいし、褒められたいし、凄い奴と思われたいものです。思った通りの成功は誰もが欲することですが、山本常朝は「成功しなければ犬死だからつまらない」という考え方が、そもそもよくないと諭します。

成功することばかり考えていたら、手段やテクニックに気が向かい、骨太な覚悟や本氣が揺らいでしまいかねません。気は焦り、肩に力が入り、重心が上がって上滑りすることにもなるでしょう。

拍手喝采を浴びることもなく失敗に終われば、犬死にや無駄死でしかない。そういう考え方は、華美に流れた元禄時代の「格好付けたがる武士道」でしかないと批判したのです。「格好付けたがる」の原文は「打ち上がりたる」です。派手なスタンドプレーを打ち上げる、計算高くて腰の浮いた武士道という意味です。

そして、山本は「そもそも生死を分ける場面にあって、どちらに行けば成功するかを見分けることは難しい」と畳み掛けてきます。人生の大事な場面では、やってみなければ分からない事が多く、どちらを選ぶべきかという見極めは大変難しいと。

その、やるかやらないか以前に、意識すべきことがあります。それは選択の基準(価値観)で、選ぶほうに大義があるかどうか、己の原点につながっているかどうか、命を賭けて惜しくない天命であるかどうかです。大義や原点や天命、これらを普段から意識しておくことが肝腎なのです。

それらの基準が無いまま、成功か失敗か、損か得かを、いちいち計算し躊躇(ちゅうちょ)してばかりいたら、刀を抜くチャンスは、たちまち遠のいてしまい、何も為すことなく終わってしまうというわけです。(続く)