その83 先手を打って、あらかじめ勝っておけ!

まだまだ中国思想には特徴があります。その第六は兵法の存在です。勝つための教えである兵法には、先手を打つこと、大局を整えること、情報を得ること、チャンスを逃さないこと、虚を突くことなどの基本があります。

『孫子』虚実篇に「先に戦地に到着して敵を待つ側は楽だが、後れて到着して戦う側は疲れる」とあります。早く着けば、人も軍馬も移動の疲れが取れます。布陣において、有利なポジションを取ることも出来ます。

戦いは準備段階から始まっています。用意周到や先手準備は、勝利への第一の基本です。先手を打って「あらかじめ勝っておけ!」ということです。

また『孫子』形篇には「巧みに戦う者は、政道を正して軍法を保つ」と書かれています。「政道」は一国の政治であり、「軍法」は軍隊の法令です。当然のことながら、政道のほうが軍法よりも大局にあたります。

戦(いくさ)の分かる指導者は、政治の大局を整えた上で、軍法を現場で徹底させていきます。いくら軍隊が前線で戦果を上げても、国家の政治が乱れていたら何にもなりません。大局の間違いは、中局や小局では補えないというわけです。

それから『孫子』謀攻篇には「敵を知り、味方を知れば、百戦して負けることはない。敵を知らず、味方を知れば勝ったり負けたりする。敵を知らず、味方も知らなければ、勝てる見込みは全く無い」という有名な教えがあります。

情報を得ることは極めて重要です。自国と敵国の長所と弱点、「地の利」や「人の和」、経済力と生産力、軍事力、さらに指導者の能力や性格などを調べます。それらをもとに現状分析し、どうしたら勝てるか、あるいはどうなったら負けてしまうかを考え、負ける手は決して使わないよう留意しなければなりません。
(続く)