その87 仏教思想概論

◇目覚めた人、つまり仏陀になるとはどういうことか?◇

綜學の各論として、中国思想の概説を終えました。今度は、これも日本思想に大きな影響を与えた仏教思想について述べてまいります。釈尊(しゃくそん)によって北インドで起こされた仏教は、西域やチャイナ、そして朝鮮半島を経て日本に伝わります。

我が国に入った仏教は日本化され、独自の進化を遂げていきました。聖徳太子からはじまり、空海・最澄・法然・親鸞・栄西・道元・日蓮・蓮如などへ続いた、日本仏教開祖の系譜がそれです。これら開祖の人物論を交えながら、綜學として仏教を解説していきましょう。

仏教とは何かと言いますと、一言で言えば「仏陀(ぶっだ)になるための教え」ということになります。「仏陀」には覚者という意味があり、目覚めた人になるための考え方や行い方をまとめたのが仏教なのです。

では、何に目覚めるのかというと、第一に真実の自己に気付くことでしょう。いつも何かに囚われ、つまらない事に拘り、目の前の出来事に右往左往している、小さな自分を超えることで本当の自分を発見するのです。

そのために感得すべきが、宇宙と自己のつながりです。インド思想は宇宙的です。古代アーリア人の民族宗教にバラモン教があり、その哲学体系をウパニシャッド哲学と言います。

ウパニシャッド哲学では、宇宙の根源をブラフマンと呼びます。宇宙の原理、万物の本体です。それから、自己の本質をアートマンと呼びます。自己に内在する本体であり、生命の根源のことです。

これらブラフマンとアートマンが、一つに繋がっているというのが古代インド思想の根幹でした。それを梵我一如と言います。「梵」は宇宙の原理であるブラフマン、「我」は自己の本体であるアートマンです。

要するに、この梵我一如を自覚することが、目覚めた人、つまり仏陀になるということです。世界の大局と自分の原点を繋いで天命を果たしていく、綜學的な自己確立の人生と相通じるものがそこにあります。(続く)