その96 仏教が日本化して、どうなったか?日本仏教の特徴5点

仏教によって、日本人の心根が深まったと述べました。それは、仏教が日本化することによって成されたと言えます。日本仏教の特徴を挙げるならば、下記5点を外せないと思います。

第一は「現世肯定」です。元来は現世の苦痛を除き、輪廻転生しなくても済む自分を養うところに仏教の意義がありました。それを、現世を「仮の世」としないで肯定し、この世を本舞台と心得るよう意識を転換させたのが日本仏教です。

第二は「欲望善用」です。現世を肯定し、人間の持っている可能性を認めれば、当然のことながら欲望を是認することになります。欲望をそのまま放っておけば放縦ともなりますが、善用すれば人と社会を進化向上させる原動力となります。

第三は「民衆仏教」です。民衆の為の仏教という性格が強いということです。出家せずとも在家のまま信仰することが可能で、出家集団と在家民衆との隔たりが少ないのです。

第四は「先祖崇拝」です。元々の仏教に先祖供養という風習は無く、仏教の教えは今生きている人の為にあり、仏典も生きている人の心得としてまとめられました。お彼岸の先祖供養のルーツは実は日本にあるそうで、皇室の春季皇霊祭と秋季皇霊祭がそれです。世界的に見て、最も先祖崇拝が盛んな国が日本であり、我が国に入ってきた仏教はやがて日本化し、お寺が先祖供養を行うようになったのです。

第五は「国家鎮護」です。初期の仏教の性格は個々の悟りによる個人救済にありましたが、やがて目指すところが利他大乗の社会救済へ進みます。その大乗仏教が我が国に入ってきますと、さらに護国の仏教に至りました。

現世肯定、欲望善用、民衆仏教、先祖崇拝、国家鎮護という特徴が、一通り定着するまでには一定の時間を要しました。奈良仏教、平安仏教、鎌倉仏教という進展の中で日本仏教が成立していったのですが、その原点を創った人物が聖徳太子でした。

先にも述べましたが、新たな統一国家建設のためには、国民の意識レベルの向上がどうしても必要と考えた太子は「仏教興隆の詔」を出されました。出家・在家、男女の別なく、誰でも悟ることが出来るという「平等の精神」と、相手に楽を与え・相手の苦を取ること喜びとする「慈悲の精神」がその基本です。

そうして、自分一人が救われるだけの小乗仏教では不十分なことを示し、個人救済の「小乗」と社会救済の「大乗」を統一する「一大乗」の精神を表されたのでした。

もともと仏教は裏観(りかん)が強く、欲望を否定する消極的傾向が目立ちます。その仏教が持つマイナス面を克服し、現在・現実・実在を重視する日本精神を注入することで、太子は「日本仏教を創造」されたというわけです。そこに、聖徳太子が日本仏教の開祖と称えられる理由がありました。

聖徳太子に続いて、空海、最澄、栄西らに綜合思想家としての性格が現れます。今度は、これら仏教者の綜合性について見ていきましょう。(続く)