その122 賢くて自分勝手な部下より、愚かとはいえ公正な部下のほうが良い…

チャイナに存在した、唯一の女帝が則天武后(武則天)です。唐の高宗の皇后であった則天は、皇帝の病中に政務を執り、その死後に即位した実子二人(中宗と睿宗)を廃して帝位に就きました。

この則天の撰による『臣軌』という本があります。臣軌とは、臣下が持つべき軌法、即ち皇帝に仕える者の心得のことです。

『臣軌』の中に「智にして私を用ふるは、愚にして公を用ふるに若(し)かず」という言葉が出ています(『帝範・臣軌』麓保孝著・明徳出版社79頁)。意味は、智略に優れているが私心の強い者は、愚鈍であるものの公廉(公正で潔白)な者に及ばないということです。賢くて自分勝手な部下よりも、愚かとはいえ公正な部下のほうが良いと。

この言葉には、組織の人事における大変重要な視点が込められております。これを四元論で考えてみましょう。

四元図を頭に浮かべてください。縦軸の上が公、下が私、横軸の右が智、左が愚です。四マスでは、(1)右上=公智、(2)左上=公愚、(3)左下=私愚、(4)右下=私智となります。

これら四タイプを説明すれば下記のようになります。
1 公智~能力が高くて性格が公明正大なタイプ、最も理想的
2 公愚~能力は低いが性格が公正穏和なタイプ、皆から好かれる
3 私愚~能力が低くて自分のことしか考えないタイプ、頭数にしかならない
4 私智~能力は高いが独断専行をやってしまうタイプ、一番危険

それぞれのタイプへの注意事項があります。
1 公智~完成度は高いが、現状に満足し、こじんまりした君子で終わらないよう、さらなる脱皮を忘れないで欲しい
2 公愚~凡庸ないい人で終わらないよう、智恵と能力をしっかり磨いて欲しい
3 私愚~このままの状態で終わらないよう、人の役に立つ喜びを意識し、小さな約束や時間を守るよう努めて、まずは細事で信頼される人間になって欲しい
4 私智~能力を発揮するほどトラブルメーカーで終わっていた過去を反省し、上下に謙虚な親分肌の器量を養い、身に備わった才能を滅私奉公に生かして欲しい

さらに、四タイプそれぞれに学んでいただくべき学習があります。(続く)