その123 公智・公愚・私愚・私智、四タイプそれぞれに学び方がある

則天武后撰『臣軌』の内容を元に四元図を描き、右上が(1)の公智タイプ、左上が(2)の公愚タイプ、左下が(3)の私愚タイプ、右下が(4)の私智タイプであるということを述べました。

これら四タイプに、個々に学んで貰いたい事柄があります。ここは大事なところですので、それぞれの性格と注意事項について、再度述べながら説明していきます。

右上(1)の公智タイプは、能力が高くて性格が公明正大です。最も理想的なタイプと言えるのですが、現状に満足してしまいますと、こじんまりした君子で終わってしまいます。そうならないよう、今一度脱皮して欲しいと思います。

そこで公智タイプにお勧めなのが、中国思想の中で最も“元気印”な孟子や、幕末志士共通の師であった佐藤一斎(『言志四録』)、高杉晋作や伊藤博文を育てた吉田松陰(『講孟剳記』)、昭和歴代首相の指南役であった安岡正篤などの教えです。あるいは山鹿素行の日本学や、葉隠などの武士道も有効です。これらによって、公智両面に磨きが掛けましょう。

左上(2)の公愚タイプは、能力は低いものの性格が公正穏和です。皆から好かれるタイプなのですが、そのままですと凡庸ないい人で終わってしまいます。そうならないよう、智恵と能力をしっかり磨いて欲しいものです。

そこで公愚タイプにお勧めなのが、中国思想の中で最も冷徹な韓非子の法家思想や、勝つための智恵の結晶である孫子の兵法などです。これらによって智恵を起こせば、ただのいい人から一回り成長し、やがて右上(1)タイプへ進化することでしょう。

左下(3)の私愚タイプは、能力が低くて自分のことしか考えていません。皆の中にいても頭数にしかならない閉塞状態にあり、そのままですとダメな人という烙印を押されたまま終わってしまいかねません。そうならないよう、まず小さな事や細かい事をきちんと務められるよう努力して欲しいと思います。

そこで私愚タイプにお勧めなのが、「人の役に立つ喜び」を意識して頂く上で有効な入門的倫理道徳や、積小為大(小を積んで大と為す)の二宮尊徳の報徳思想などです。間違った個人主義によって多くなっているのが私愚タイプなのですが、倫理道徳の教えによって「喜ばれる喜び」に目覚め、小さな約束や時間を守るよう気を付けていけば、次第に信頼される人間となって左上(2)タイプに上がっていきます。

右下(4)の私智タイプは、能力は高いものの自分勝手な性格が強く、つい独断専行をやっては問題を起こしてしまう問題児です。そのままですと、どこに移っても組織や活動を混乱させる危険人物で終わりかねません。

そこで私智タイプにお勧めなのが、能力を発揮するほどトラブルメーカーになってしまった過去を反省し、上に謙虚で下に温厚な親分肌の器量を養い、身に備わった才能を滅私奉公に生かしていくための帝王学(指導者学)です。大きく二つの学問があり、人生観のバックボーンを確立してくれる「山の思想」としての儒家(論語)と、器の大きさや懐(ふところ)の深さを養ってくれる「谷の思想」としての道家(老子)は必修です。これらによって、きっと右上(1)タイプに脱皮出来るはずです!

この私智タイプの処遇では、西郷隆盛や松下幸之助翁も苦労しました。西郷さんは「どれほど勲労があっても、相応しくない人を地位に就けてはいけない。官職は人を選んで授け、勲労ある者には俸禄(ボーナス)で報いるように」と言っています(『西郷南洲翁遺訓』)。

現代でも、頑張って成果を上げた者の地位を上げたところ、周囲から総スカンを喰らってしまい、辞めて貰うのに一苦労したという話をときどき耳にしますが、きっと西郷さんも右下(4)私智タイプに手を焼いたのだと思います。

また、松下幸之助翁は、賢い人は会社を興すが同時に潰すかも知れない、平凡な人は興しもしない代わりに潰しもしないと言われました(「松下幸之助研究」2002年春季号・PHP研究所62頁より)。賢い人が失敗するのは、私心で独断専行をやってしまうからというわけです。

なお、松下幸之助翁の教えは、公智・公愚・私愚・私智の全てのタイプに有効であると思います。(続く)