その124 政治も経営も、一番の苦労は人事と人間関係にある…

公智・公愚・私愚・私智の四元論の補足です。

左上(2)の公愚タイプは、人物が萎縮し易いことに注意しましょう。せっかく公の精神を持っているのですから、もしも公正さを妨げる出来事が起こったり、不正を働く人を見たりしたら、もっと憤るべきです。

この公愚タイプは一般に優しいです。でも、器量の大きさに由来している温和さであるかどうかかは不明です。争うことが面倒、怒れば疲れる、嫌われるのは嫌だという思いで、ただ静かにしているのかも知れません。そうであれば、精神が練れたから怒らないというのではなく、悟ったから動じないというのでもありません。

兎に角、公愚タイプは内に籠もりがちです。まだこれから飛躍しなければならないときに、早くも趣味的人生に隠居してしまうようなことの無いよう、自らをしっかり鼓舞して欲しいと思います。そのためにも、進化向上への意欲や、不正に対する公憤心を失わないようにして欲しいのです。

それから左下(3)の私愚タイプですが、このタイプで少し勉強が出来た人は、自分の努力不足を棚に上げたまま文句ばかり言ってくることがあります。能力不足への劣等感の裏返しからか、いわゆる「上から目線」の批判的意見を伝えてくるのです。

しかし、元来が自己本位で視野が狭いため、部分に囚われた愚論が目立ちます。このタイプが公の心を養わないままテクニックだけ身に付けますと、(4)の私智タイプの子分や使い走りになってしまうことがありますから、よくよく注意しましょう。

なお、私智タイプに勝手をさせないよう、法治システムを整えて枠を嵌(は)めているのが、いわゆる“お役所”です。決められた事以外はやらせない、担当以外の事に手を出させない、飛び抜けたヒーローを誕生させない、といった法治体質が組織にあるとすれば、知らず知らずのうちにお役所的になっているということです。

私智タイプは、覇気と能力を兼ねています。これを、このまま抑え付けておくのは勿体ない話です。そうかと言って、任期の長い役職に就けると、独断専行をやり出してしまう危険があります。そこで、私心が頭を擡(もた)げてこないよう注意しながら、期限を決めたプロジェクト・リーダーなどから任せてみてはどうでしょうか。

私智タイプの可能性があるかどうかは、下の立場の者への態度で概ね分かります。上からものを言える相手や目下の者に対して、かなり横柄な場合、私智タイプの可能性が高いと思われます。

さて、政治も経営も、一番の苦労は人事と人間関係にあります。組織をまとめる立場の人が使うエネルギーの、かなりが「人の苦労」に費やされていくのです。

率直に言えば、人の心は身勝手に出来ています。肉体を持って生きている以上、まず自分を守らねばなりませんから、エゴイスティックな考え方をするのは当然のことです。腹が減ってひもじいのは自分ですし、転んで痛いのも自分です。ひもじさや痛みを他人に代わって貰うことは不可能であり、我々はどうしても自分中心的にならざるを得ないのです。

そういう人間の性質を知らなければ、何をやっても理想倒れで終わります。人間と世の中が嫌いになって、自分だけ達観した気でいる隠者ではどうにもなりません。それで、私愚タイプや私智タイプへの対応が重要になるというわけです。(続く)