その5責任感や使命感があれば、威厳は必ず備わる!

「五事」の続きで、今度は「地」です。「地とは何か。それは、距離が遠いか近いか、地勢が険しいか易しいか、地域が広いか狭いか、地形が高いか低いかなど、地理的条件のことだ」とあります。

これらは、戦いの場所を知っておくことの重要性を示しています。戦場までの距離は遠いのか近いのか、そこは険しい地なのか平らな地なのか、範囲として広いのか狭いのか、地形として高地なのか低地なのか、といった地理的条件を掴んでおけと。

何かの店を出したり、事務所を構えたりしようとする場合も同様です。主要駅までの距離、人口の多い少ない、住民の雰囲気など土地柄、競合店の位置など、周囲の状況をよく調査しておく必要があります。

4つめは「将」です。孫子は「将とは何か。それは、知謀、信義、仁愛、勇気、威厳など、将士の人格や能力に関する人材的優劣のことだ」と述べ、リーダー層に必要な資質を強調しました。

「知謀」とは、情勢の変化を掴む観察力、相手の心理を読み取る洞察力、打つべき対応策を練る知力など、リーダーに必要不可欠な能力のことです。これらが無いと、部隊を的確に指揮出来ません。

「信義」は、部下に信頼される人格です。言う事と行う事が一致しているかどうかという、言動の一貫性が問われます。将士(上の者)から決まりに従い、小さな約束を守ることが肝腎です。

「仁愛」は、部下や人民に対する真心や愛情、慈悲心のことです。これが無いと、人は心から付いて来ません。人が離れていく大きな要因に、情の不足があります。

「勇気」は、怯(ひる)むことなく前に向かう気迫のことです。将士(上司)も戦う前は緊張しますが、それを兵卒(部下)に見せてしまえば、部隊全体の士気が下がってしまいます。

そこで必要になるのが「威厳」です。威厳は、自ずと湧き起こる威力や、自然体のままで現れる厳(いか)めしさ、全身から滲み出ている侵し難い迫力のことです。気構えさえあれば、それらは養われます。責任感や使命感をよく自覚し、気を抜かないで生きていれば、泰然とした威厳は必ず備わるものです。立場や地位が人をつくるとは、そういうことなのです。(続く)