その6 こんな程度のことなら、とっくに知っているさ、と思ったあなたへ

勝利を得るための基本である「五事」の最後は「法」です。「法とは何か。それは、軍隊の編成、職分、主軍の用務などについての、組織的規律のことだ」と孫子は説きました。

「軍隊の編成」の原文は「曲制」です。曲には、細かい事柄、すみずみまで詳しい、という意味があります。曲制は、軍隊における詳細な組織編成のことです。

「職分」の原文は「官道」です。官道の「官」は官職、「道」は制度のことです。将士・兵卒それぞれの職分、即ち役割分担を意味します。

「主軍の用務」の原文は「主用」です。主軍には十分な装備が整えられており、その目的や用い方を決めておけと。そうでないと、装備や物資は宝の持ち腐れとなってしまいます。

こうして軍隊の組織編成と、それぞれの職分、さらに装備の用い方などを予(あらかじ)め定めてあるかどうかを問い、それらによって組織的規律の高さを判定せよというわけです。

「道」「天」「地」「将」「法」の五事。これらの内容を学んで、皆さんはどう感じたでしょうか。「特に新味は感じないね。こんな程度のことなら、とっくに知っているさ」などと思った方はいませんか。

約2500年前に孫子の講義を聞いた者の中にも、そういう感想を持った人がいたようです。孫子は言いました、「これらについて、将軍なら誰でも学んだことがあるだろう」と。

学んで知ったということと、それを身に付けたということの間には、まことに大きな隔たりがあります。知っても、それをやってみなければ何にもならず、やってみるにしても、体得するところまで繰り返し実行し、知恵を使って工夫しなければ成果を生みません。

あなたは将軍(りーだー)なのだから、五事の内容くらい既に学んでいることは分かっています。「だが、五事をしっかり知る者は勝ち、深く知らない者は勝てないのである」から、ここはもう一度素直になって兵法を学び直してみませんかと。それは、2500年の時の流れを超えて、孫子から現代の我々へのメッセージなのです。(続く)