その16 兵士・物資・食糧、これらの輸送で国家は疲弊する

「戦上手は兵士を二度と徴用せず」。これは、兵士を一度徴発したら、その兵力で早期に勝つよう努め、繰り返し徴兵して国民を苦しめないという意味です。

「食糧は三度と運ばない」。こちらは、二つの意味が考えられます。一つは、戦争の途中で戦地に食糧を運ばないという意味です。一度目は出陣のとき、二度目は勝利の凱旋のときに食糧を自国から運ぶのですが、その間の食糧は現地で調達せよという指示になります。もう一つの意味は、母国からの食糧配送は二度までとし、三度目は許さないという戒めです。いずれにせよ、食糧の現地確保が重要だったのです。

なお、現地調達は略奪とは違います。相手軍の食料庫から戦利品として確保した場合は別として、基本は代価を支払って購入しました。

現在は敵地であっても、勝利後に領域が広がれば、そこも自国領となるかも知れません。自国領となることを見越して、今から人心を得ておく必要があり、そのためには人民から食糧を強奪することなど、以ての外の行為でした。

とにかく「国家が軍隊のために疲弊するのは、兵士・物資・食糧を遠くに輸送せねばならないから」でした。「遠くまで輸送すれば、その負担で国民は疲弊」します。それは21世紀の今も同じです。戦争ほど負担が大きな行為はありません。

負ければ国土を削り取られ、賠償金に苦しめられます。だから戦わないのが一番であり、戦うなら勝たなければならず、しかも早期に終わらせなければ、勝ったとしても多くの戦死者や被害者が出て、傾国や亡国の元になりかねません。

それから「軍隊が近くに駐屯している場合は物価が上がる」というのは、軍隊が食糧や物資を買い上げるために、それらが不足状態となって物価が上がることです。その結果、そこに住む「国民は蓄えが尽きて生活が苦しくなり、いっそう軍役が激しい負担となる」のです。

こうして、戦争は国民生活を最も苦しめる悪習であるということを前提に、戦わずにすむよう国力を充実させ、常に敵国の侵略の意図を挫いておき、もしも戦争となったら早く決着を付けるよう努めるというのが国防の基本であったわけです。(続く)