その17 財政の6割を戦争に費やすという異常事態

国家は国民によって成り立ちます。生活が豊になって国民が幸せに暮らせなければ、そもそも国家の存在に意味は無くなってしまいます。

その国家と国民に、最も多大な被害を及ぼすのが戦争です。それで孫子は「計篇」の最初に「戦争は国の重大事だ。国民の生死が決まるところであり、国家存亡の分かれ道でもある。だから、しっかり考えなければいけない」と教えたのでした。

戦争を避けるため、国家として外交を巧みに行い、開戦に至らないよう最大限の努力を払わねばなりません。戦争は人類の悪弊です。いつの日か、戦争が不要な世の中を創りたいものです。

しかし、こちらに侵略の意図は無くても、相手から仕掛けられることがあります。あるいは、第三者の謀略によって戦争に引きずり込まれるということもあり得ます。だから、いつ戦争が起きるか分からないのが人間世界の現実であるということを、決して忘れるわけにはまいりません。

そして、万一戦争となった場合、出来る限り早期に終わらせる必要があると孫子は唱えました。戦争が長引けば「国力が低下して窮乏し、国内の家々の暮らしはどん底に陥ってしまい、国民は所得の7割を税金で持ち去られ、国家財政は、戦車の破損、軍馬の損失、武器・兵器や装備の補充(ほじゅう)、大牛に牽引させる輸送車など輸送手段の消耗によって、その6割が費やされてしまう」からです。国民は所得の7割を納税し、国家は財政の6割を戦争に費やすというのですから、戦争は本当に異常事態です。

そこで、一つの方法として「知謀に優れた将軍は、食糧を敵地で調達するよう努め」ました。「敵地で調達した食糧一鐘は、自国から運んだ食糧二十鐘に相当し、敵地で調達した飼料一石は、自国から運んだ飼料二十石に相当する」と。

食糧の「鐘」と飼料の「石(こく)」は、どちらも量の単位です。敵地で食糧と飼料を調達すれば、自国から運んだ場合に比べて、どちらも20倍の価値があるというのです。

すなわち、膨大な負担となる輸送経費の問題を訴えているのが「作戦篇」のポイントなのです。いかにして経費を減らすか、そのために現地調達を図るか。これは、現代の政治や経営に置き換えてみるべき視点ではないかと思われます。(続く)