その33 防御と攻撃、どちらもその形勢が相手から分かり難いことが重要

それから、防御にせよ攻撃にせよ、こちらの形勢が相手から分かり難いことが重要です。そのために孫子は、防御の際は「地の極まるところの下に兵力を隠し」、攻撃の際は「天の極まるところの上で兵力を動かせ」と教えました。

地の底の底に兵を隠して防御し、天の上の上で兵を動かせというのですから、軍隊の形勢を相手に覚られないことの大切さが強調されていることが分かります。そこまで念入りに注意してこそ、「自軍を保って勝利を全う」出来るという次第です。

この如何にして覚らせないよう工夫するかということについて、武道も同じことを教えています。空手道の自由組手では、構え、間合い、スピード、タイミング、氣合いなどについて指導を受けます。

例えば攻撃を覚られないための工夫として、ノーモーションで突くよう鍛錬します。腕を後ろに引いてモーションを大きくしますと、「さあ今から行くぞ!」と言っているようなもので突こうとしていることが容易に覚られます。それに、腕を引いた分、突くのが遅くなってしまいます。

それから、不必要に力みますと身体がこわばり、肩に余分な力が入ってしまいます。当然、動きが遅くなりますし、肩や肘などの微妙な動きから攻撃の意志を見抜かれてしまうことにもなります。

組手は手足をそれぞれ前後に構えますが、「前の腕」で「後ろの腕」を隠すように構えますと、相手から見て「後ろの腕」の動きが分かり難くなります。そうしてタイミング良く突き(逆突き)を繰り出せば、相手が気付いたときには、もう突き終わっているということになります。その際、裂帛の氣合いで相手を圧倒することも忘れてはなりません。

また、突く間際に「後ろの足」を少し引き付けておきますと、その分、より間合いを詰めることが出来るので前に出る勢いが増します。このときも「前の足」に隠れるよう「後ろの足」を引き寄せますと上手くいきます。

伝統空手の自由組手の場合、ボクシングなどに比べて間合いが遠いのが普通です。間合いが遠い分、相手の攻撃を読んでの防御や、威力をタメたり間合いを詰めたりする機動的な攻撃が重要になります。防御と攻撃、どちらも可能な限り覚られないよう腕を磨くところに稽古の意味があるのです。まさに攻撃と防御は一体なのです。(続く)